あまりしゃべらずに治療するタイプ
静かに鍼をする方です
美容室に行くと、スタイリスト見習いのアシスタントさんが髪の毛を洗ってくれたりします。
そのときに、「今日は休みなんですか~?」とか、「これからお出かけですか~?」と話しかけてくることがあります。
私はそれを嫌とも思いませんし、ふつうに受け答えします。
しかし、疲れているときなどはできたら静かにしてほしいなぁというときもあります。
また、アシスタントさんのその口調から、馴れない声かけをしてくれているんだなぁと感じるときは、その気遣いに対してちょっと申し訳なく思うこともあります。
こういうのは、正直ストレスに感じることもなくはありません。
鍼灸師やマッサージ師も、中にはそのような感じで患者さんに話しかけたりする方がおります。
無難なところでは天気の話題あたりはふつうで、サッカーや野球などスポーツの話などが多いかもしれません。
鍼灸師の中には、そういった話術を“口鍼(くちばり)”と称して、それも鍼灸のうちと積極的に行う方もいるようです。
あらんことか、中には、“チーッス!大丈夫っす!”みたいなノリで押し切ってしまうとか、話していればなんとなく誤魔化せるからするという、それも含めた口鍼なんだから、もっとこっちから話しかけた方が良いというアドバイスも聞いたことがあります。
それにひきかえ・・・
私はどちらかというと静かに鍼をする方です。
無闇矢鱈とこちらから話題を提供して話をするということはほとんどありません。
場合によっては、最初の問診をした後は、ひたすら施術に向き合ってクライアントさんとは会話を交わさないこともあります。
患者さんは疲れている存在
患者さんに無駄な話しかけはしない、それが施術者の心がけ
でも、私が鍼灸をしている間お話しをなるべく交わさないようにしているのは、決して患者様をないがしろにしているからではありません。
むしろ、患者様を尊重するからこそ、無駄なお話しをすることを避けているのです。
患者様はお疲れになっていらしている存在ですから、余計な気をお遣わせになるような会話はしたくありません。
鍼灸院にいらっしゃる方の多くは、身体や心のどこかに不調を抱えているものです。
身体や心に不調があるということは、疲れている状態です。
疲れている状態とは、もう何をするのも億劫で、ちょっとした話をすることも面倒なものです。
そもそも鍼灸院にはリラックスや施術を求めてくるわけですから、患者さんに無意味な話しかけをしたら、より一層疲れてしまいます。
患者さんは、鍼灸院に日ごろの疲れを癒やしにいらしているのに、施術者の話しかけで逆に余計なストレスをかけてしまったら本末転倒です。
そういったこともあり、私は静かに施術することを基本にしています。
このことは、私の師匠に教えていただいたことです。
「本治法と呼ばれる鍼灸は、本当に身体も心も弱った方が求めてくるものだから、みんな疲れ切っているもの。変な話にお付き合いするだけの気力もない方も多いのだから、余計な話はするんじゃないよ」と教えていただきました。
しかしお話しをすることも・鍼灸の一環として
といっても、全くお話をしないわけではありません。
中にはお話しをすることでストレスを解消する方もありますし、話をすることで気持ちが明るくなるという方もおりますから、そのあたりは臨機応変に話をしてまいります。
東洋医学的に考えると、心身の健康にとって会話はとても大切なものです。
声を出すと胃腸が動きますし、会話をすると頭も使います。
そういった観点からすると、決して会話をすること全てが無駄だと思っているわけではなく、患者さんの状況を見ながら、うまくストレスを発散していただくような会話を導き出す、そういった会話が鍼灸師にとっての治療としての会話になると考えています。
もちろんそこも気を遣いながら、“受け”を主体とした会話をするように心がけています。
話しかけをするときは問診の一環として
私たち鍼灸師は、患者さんがもっている不調を調整するのが役目であります。
その不調がどこから来ているのか、そういったことを探り当てることが大事になります。
たとえば身体を観ながら寝不足だなぁというのがわかったときは、それが仕事でやむを得ないものなのか、それとも何か心に不安があって眠れなかったのか、その眠れない原因がわからないときは、それを聞いておくことが鍼灸のヒントになります。
しかしこれをあからさまに聞くのは野暮というのか、患者さんにストレスをかけることになります。
こういうときは、「昨日はワールドカップを遅くまで観てたんですか~?」とさりげなく聞くようにしています。
もしその答えが、「そうなんですよ、ちょっと観はじめたら結局最後まで観ちゃってねえ~」というのであれば、これは病的な寝不足ではありません。こういった寝不足は、寝ようと思えば寝られるわけですから、そこに不調のタネがあるわけではありません。
しかし、「いやいや、そんなサッカーなんて・・・。最近はちょっと考え事が多くて眠れなかったんですよ~」ということであれば、この考えすぎるストレスを取ってあげないと睡眠不足は解消できません。この場合は、鍼灸の対象としてどこをどうやってツボを使っていこうかと考えなくてはいけません。
このように、鍼灸師がするお話しとは、本来は問診の一環としてなされるべきです。
無駄なお話は患者さんへの余計なストレスになりますので、極力しないようにしています。
でも、おしゃべり・お話しが嫌いではありません。
もちろん鍼灸や身体に関する質問は随時受け付けておりますので、施術中は、私が黙って黙々と鍼灸をしていたとしても、そんな幼児がございましたらときにはお気軽にお話しかけくださいませ。
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あくまで鍼灸が主体です
これは個人的なものなのだとは思いますが、私は鍼灸をしているときに、ときにゾーンと呼ばれるところに入ってしまうことがあります。
ゾーンとは、鍼灸をすることに専念しすぎてしまい、集中力がすーっと静かに研ぎ澄まされていく瞬間です。
こういうときは集中力が高まっているので、鍼灸がしやすいです。
逆に、患者さんとの話に気を取られすぎると、正直手が動かないときもなくはありません。
私のマッサージ師をしている友達も、話の方に夢中になって手が動かないときがあると言っています。
私も鍼灸歴が20年近くなってきており、多くの経験を積んでまいっておりますので、ちょっとやそっとの会話で手が止まるという事はありませんが、それでもやはり話ながら鍼灸をするのはけっこうたいへんではあります。
鍼灸師の中には、“口鍼(くちばり)”の方が得意だなんて方もいるようですが、私はあくまで鍼灸が主体の“本治法・鍼灸師”であります。
もし鍼灸を受けているときに、私の会話が止まったりした場合は、ゾーンに入って鍼灸をしているなとご理解いただけたらと思います。
表参道・青山・源保堂鍼灸院
Tel. 03-3401-8125
http://genpoudou.com/