哀しいとき・パート2
石原慎太郎が鍼灸を広めてくれたのは有り難かったが・・・
開業当初(2004年)の頃
開業当初の頃、東京都の都知事は石原慎太郎でした。
その頃の石原慎太郎はよくマスコミに出ており、自分の健康の秘訣を話していました。
石原慎太郎がどのような都政をしていたのか私は今もってよく分かりませんが、当時は大人気の知事でしたから、注目されていました。
そんな状況の中で、彼がよく話していた健康の秘訣が、「鍼灸を受けること」でした。
石原慎太郎が部類の鍼好きであることは、鍼灸業界では有名な話で、岡田明佑先生という名人の鍼療を受けていることも皆の知るところでありました。
この岡田明佑先生の鍼灸院は、源保堂鍼灸院の近くにあります。
近くといっても、ここから歩けば15分くらいはかかるので、近いってほどでもないのですが、住所的には、番地は違いますが、同じ「神宮前」になります。
今でこそ都知事といえば小池百合子!
となりますが、これと同じように、当時も都知事といえば石原慎太郎!という感じで、注目の的だったと思います。
都知事として絶好調であった石原慎太郎ですから、彼の言動もまた影響力があります。
その彼が「私の健康の秘訣は鍼灸」と言い放ち、そして、「通っている鍼灸院は神宮前鍼療所!」と高らかに話していましたから、石原慎太郎と同世代の人にとっては、同世代のヒーローがそこまで言うものですから、猫も杓子も神宮前鍼療所に行かなくては!なんて思いに駆られたようです。
そこから、源保堂鍼灸院の哀しいとき、悲劇が始まったのです・・・。
間違って検索する人続出・・・
開業当初は、ようやくインターネットが普及しはじめた頃だったでしょうか。
ADSLなどのブロードバンド回線が一般的になり、インターネットで検索する人が増え始めた頃です。
まだその頃はスマートフォンやタブレットはありませんでしたが、メールは普通にやり取りをしていましたし、インターネットの普及が急速になっていた時代です。
しかしかといって、情報収集ツールとしてインターネットにアクセスしている人は、まだまだ少ない方だったと思います。
開業当初は暇ですから、鍼療と勉強の合間はホームページを作り込んでいました。
また、ブログなるものがあるというのを聞いて、鍼灸院の中では、ブログもいち早く取り組んでいた方だと思います。
逆に、神宮前鍼療所は、先代の名人から受け継がれた伝統がありますので、ホームページを作らなくても患者さんがいらっしゃるので、今はどうか分かりませんが、その頃の神宮前鍼療所は、申し訳程度のホームページしかありませんでした。
このような状況ですから、何が起きるかというと・・・
「神宮前 鍼灸」「鍼灸院 神宮」といったキーワードで検索しますと、同じ神宮前にある源保堂鍼灸院が上位に出てしまうのです!
でも、検索している方のお目当ては、石原慎太郎が通っている神宮前鍼療所です。
でも、そこが検索結果に出てこないわけです・・・。
そこで、何が起きるかというと、源保堂鍼灸院に電話がかかってくるんです!
「すみません、神宮前鍼療所ですか?」というのは序の口です。
「あのー、神宮前、鍼灸院で検索するとお宅しか出てこないのですが、石原慎太郎さんが通っているところではないですよね?」
まだこれも許せる感じです。
「えーっと、あの、たいへん申し訳ないのですが、石原慎太郎さんが通っている神宮前鍼療所の連絡先を教えていただけませんか?」
ここまでくると・・・うちは何なんだって哀しくなりますよね。
申し訳なさそうに電話してくれるならまだいいのですが、「紛らわしいことするな!」「なんでお前の所が出てくるんだ!」とか、電話越しで怒る方もおりました。
私に八つ当たりされても困るんですけど、ほんとに、こういうことがあったのです。
みなさん口を揃えたように、「テレビで見たんですけど・・・」「テレビでやってた・・・」と、テレビで、テレビでと・・・。
そして、「石原慎太郎が・・・」「都知事の石原さんが・・・・」と、石原、石原・・・。
さらに、「雑誌で・・・」「石原さんが雑誌の対談で・・・」と、雑誌で、雑誌で・・・。
今思うとすごかったです、この攻勢は・・・。
勘違いしたまま来院する方も続出・・・
このように、検索結果を間違えて電話だけで済むならいいのですが、なんと、勘違いしたまま源保堂鍼灸院にいらっしゃる方も続出したのです!
例えばこんな感じです・・・
とある老夫婦がいらっしゃいました。
カルテのご記入をしていただき、住所を見るとかなり遠いところからでした。
どうして源保堂鍼灸院にいらっしゃったのか、正直謎に思ったのですが、口コミの口コミで遠くからいらっしゃる方もおりますので、この方もそうなのかなと思い、さて、鍼療に入ろうかとしたところで・・・
「えっと、あの、ここはテレビでやってた所ですか?石原慎太郎さんが通っている名人のいるところと違うんですか?」とおっしゃるのです。
私はこの頃テレビを持っていなかったので、石原慎太郎がテレビで鍼灸のことを語っているとかは知らなかったので、一瞬キョトンとしてまいました。
でも、あ、そういうことか、最近問い合せが多かったからな・・・と気がついて、正直、「うちではありませんけど・・・」と伝えました。
そうすると、その方は、
「あ、なんだ、息子が調べてくれたからここだと思ったんだけど、違うんですか。じゃあ、帰ります。」とおっしゃって、そそくさと立ち去っていきました。
この方は、まだ受鍼もされていないのでいいのです。
それはそれで、料金も発生しませんから、お互い後腐れはありません。
しかし、うっかりと勘違いされたまま何回か受鍼された方がおりまして、後日、「ずっとここが石原慎太郎さんが通っていたところと思っていたけど、違ったの?違うなら早く言ってよ!」とおっしゃる方も。
別に私は騙したわけではないし、何もそのあたりは聞いていなかったので、ふつうに源保堂鍼灸院を選んでいらしていたのだと思っていたのですが、そうじゃなかったのかとそのとき気がつき、なんともやるせなくて落ち込みました。もちろん鍼療は常に全力を尽くしますし、騙したわけではありませんので、これまでの鍼療代をお返しすることはありませんでしたが、なんともばつが悪いというのか、素直にこれまでの鍼療代を受け取ったままでいいものかとか、うれしくはありませんよね、やはりそこは。
表参道・青山・源保堂鍼灸院
Tel. 03-3401-8125
https://genpoudou.com/