ブックチャレンジ鍼灸院篇をやってみました
ブックチャレンジをしてみる、このステイホームで
ブックチャレンジとは?
新型コロナウイルスCOVID-19の感染防止のため、外出自粛、STAYHOMEが励行されていたなかで、フェイスブックをはじめとするSNSでは、様々な“バトン”と呼ばれるものが渡されていました。
この“バトン”とは、ある企画を、友人や知人に渡して繋げていくもの。
例えば今回あったのは、料理のレシピや幼少期の写真など。
それぞれ簡単な(強制するものではないのですが)ルールがあって、それを元にやっていきます。
そういったバトンのうちの一つが、“ブックチャレンジ”なるもの。
自分が好きな本を挙げてもいいですし、影響を受けた本でもいいし、資格の取り方など、実用的な本を挙げている人もいました。
そこに、「表紙を載せる」「説明は加えない」「一週間やる」というくらいのルールがついている、といった感じです。
そこで始めたブックチャレンジ
緊急事態宣言が発せられてしばらく後、知人からバトンが廻ってきました。
当初は、自分の仕事以外に、箱根の実家のことを気遣ったりと、他にやることがありましたので、今は無理だなと断っていたのですが、少し時間もでき、気分転換になるかもと思って、参加させていただきました。
そこで考えたのは、普通に自分が好きな本を挙げてもつまらないだろうと言うこと。
また、自分の好きな本でも、今は手元にないものもありますから、無理をしてもいけない。
ということで、「ブックチャレンジ鍼灸院篇」と称して、これまで自分が鍼灸師として歩んできたなかで出逢った本をいくつか挙げよう、そんなコンセプトで始めることといたしました。
ということで、1週間の成果をご覧いただけたらと思います。
ブックチャレンジ鍼灸院篇の1週間
初日・『経絡経穴辞典』東洋学術出版
初日にご紹介した本は、『経絡経穴辞典』です。
これは、鍼灸学校に入ってすぐに、教科書以外で購入した最初の鍼灸関連の本です。
一番最初に受けた授業で、ツボの話がじゃんじゃん出てきて、これは何か参考書がないとダメだ!と思って、本屋さんに駆け込んで買いました。今でも高い本で、当時もそれは変らないのですが、ここはもう無理を押してでも買っておかないとダメだと思ったものです。
鍼灸師になって20年になりますが、今でもしっかり現役の本として利用し、取材などのときには必ず引っ張り出しています。
二日目・『東垣医集』人民衛生出版社
こちらは、金元四大家のうちの一人、李東垣の全集です。
李東垣は、補中益気湯という有名な方剤を編み出した医家で、胃腸の力の大切さを強調しました。この現在においても、参考になるところがたくさんあります。
3日目・『東医宝鑑』許俊
3日目に挙げましたのは、『東医宝鑑』という韓国の古医書です。
著者の許俊は、何度か韓国ドラマにもなっている、「ホジュン」のことです。
李氏朝鮮時代に実際に生きた医家であるホジュンが、晩年、当時手に入る医学書をまとめたもの。
現在でも、とても参考になるところがあるものです。
4日目・『脉法手引草』山延年
源保堂鍼灸院では、脈診を重視していますが、その原点となっているのがこの『脉法手引草』です。
江戸時代に書かれた本ですが、著者の山延年については、この本を書いた以外は何一つ知られていません。
師匠に薦められた一冊です。
5日目は二冊
『医学実在易』陳修園、『易学与養生』劉長林
易というと、占いと思われている方も多いかと思います。もちろんそういった側面もありますが、それ以上に、“変化”というものを捉えようとした学問でもあります。そしてそれが、医学にも通じる、というのが東洋医学のおもしろいところです。
医学は体の変化を観る学問です。
易学は森羅万象の変化を観る学問です。
一見すると、全く異なることに思えますが、根底では繋がっている、つまりは、体も自然の一部であり、自然とともに生きているのが体であるというのが東洋医学の身体観の一つです。
ここをもう少し深く理解できれば、もっといい鍼灸ができるのではないかと、筮竹も実践している今日この頃であります。
6日目・『本草綱目』李時珍
李時珍は、明の時代に生きた医家。この『本草綱目』だけではなく、『瀕湖脈学』という脈診の本や、『奇経八脈考』という経絡を解説したものも出版している偉大な医家です。
『本草綱目』は、草木を中心に、鉱石、動物など、あらゆるものを分類し、その効能などを現わしたものです。
現在も、薬膳の資料などにも利用されます。
最終日・『中医大辞典』
最終日は、中医学・東洋医学の辞典をご紹介しました。
書名は、『中医大辞典(または中国医学大辞典)』です。
年代的には、日本で言えば大正の頃に編纂されたものです。
謝観という先生がまとめたのですが、現在においても、この辞典が基準になっているところがあるようです。
私が所有しているものは、写真のようにとても分厚く製本されたものです。
だいぶ前に出版された版のものを購入したので、紙が厚めですから、もしかしたら日本の辞書のように薄い紙で作ったらもうすこしスリムにできるかも?と思いながらも、この題字と分厚さを観ると、なんとなく異国情緒を誘い、ついつい引きたくなるのであります。
まだまだご紹介したい中医学・東洋医学の本はありまして、惜しくもこの7冊から漏れたものもあります。
また機会があれば掲載したいと思います。
上記の本は、いずれも自分にとっては“出逢い”でした。
本にまつわる出逢いは、ひとつのご縁です。
みなさまにおかれましても、たくさんの本との物語があると思います。
そんな物語の一つをご紹介いただけたらと思います。
それがまた、次のご縁を産み出すことでしょう。
私自身も、今後も本との出逢いを大切にしたいと思います。