『アレルギー医療革命』 NHKスペシャル取材班著
免疫の奥深さ
2018年のノーベル賞で、日本の本庶佑氏が受賞しました。
受賞の功績は、オプジーボというガン治療の薬を開発したことです。
このオプジーボは、人間がもっている免疫力のメカニズムを利用したもので、その発想が医学会では画期的だったそうです。
このノーベル賞の受賞によって、これからますます免疫力が見直され、その研究も進んでいくと思われます。
ということで、本日はアレルギーに関する本を一冊ご紹介いたします。
免疫力はバランス
ついつい“免疫力を強くする”と言ってしまいがちですが、これには語弊があります。
例えばリウマチなどの自己免疫疾患などは、免疫力を高めてしまうと自分への攻撃が強くなりますので、症状が悪化してしまいます。
これは、免疫が過剰に反応しているアレルギーも同様で、単純に“免疫力を上げる”ことで治るものではありません。
そこで大事になってくるのは、免疫力の強さではなくバランスです。
免疫とは、単純に外から入ってきた異物に対して攻撃を加えるものだけではなく、敵か味方を見極めたり、攻撃が過剰になってしまわないようになど、いくつか種類のある免疫細胞が、それぞれの機能をバランスよく行うことで全体として力を発揮します。
Tレグ細胞
今回ご紹介した『アレルギー医療革命』でキーワードになるのが、Tレグ細胞(制御性T細胞)と呼ばれるもの。
Tレグ細胞と呼ばれる免疫細胞が、免疫力を抑制しているというのが最近分かってきて、これがアレルギーと密接に関係しているのでは内科というのが本書の骨子です。
中には、ピーナッツオイルを使って反ってピーナッツアレルギーになってしまった例などが挙がっておりまして、これはとても興味深いおはなしです。
また、日本でも戦後からアレルギーの症状が増えていると言うことですが、これはあまりに清潔になりすぎてしまった環境がよくなかったのではないかというお話しもあります。
まだ途上のようですが
本書のタイトルには、“医療革命”という強い表現がありますので、すでにアレルギーの全てが解明されたかのイメージを持たれるかもしれませんが、読んでみるとまだ仮説の段階のものもあるようで、タイトルほどの強さを読後に感じることはありませんでした。
しかし、アレルギーがどのように起きるかという一つの流れを理解することができ、そこから対策も考えられるという意味では、好著になるのかなと思います。もともとNHKスペシャルでやっていた番組を起こしたものなので、とても読みやすいのもいいと思います。
本書を読み、鍼灸がアレルギーに対して何をできるのか、今一度考察してみる一冊となりました。
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