『東洋医学の、全体と個の一体感』
東洋医学の、全体と個の一体感
全体と個の関係
東洋医学には、現代医学にはない“身体の視点”がいくつかあります。
その中の一つが「全体と個の一体感」です。
これは、身体全体と身体の諸要素には一体感があり、そこには相似的な関係を見出すことができるという考え方(実践でもあります)です。
“全体は個のため、個は全体のため”というように、全体と個はお互いがお互いを必要としており、離れることができない関係にあります。
例えば我々の身体の中には、臓器があります。
心臓があり、肺臓があり、腎臓があり・・・。
しかしそれらは単独では存在することができず、全てが有機的につながってこそ生命として存在することができます。
これは、“個が全体を生かしている”という見方になります。
そして身体全体が生きるという生命活動を目的にしているからこそ、個々の各臓器は自分の力を発揮することができます。
つまりこれは、“全体が個を生かしている”ともいえます。
以上のように、全体と個というのは、お互いの存在がお互いを生かし合っている関係があります。
全体と個は別物でありながら同じ
全体と個は、お互いを生かし合っている関係ですが、生かし合っているということは、お互いの中に、同じ要素・構造・機能が含まれているということでもあります。
この考え方を具体的に示したのが、東洋医学・東洋思想の五行ということになります。
万物は木火土金水という5つの要素で成り立っているというのが五行学説ですが、すべてに五行という相似関係があるからこそ、この分類が可能となります。
例えば目ですが、大きな身体全体の分類で言えば、部分である目は木に配当されます。
さらに目には、黒目が水、白目が金というように五行の配当があり、部分をさらに細かく分類することができます。
これは、全体に五行があるだけではなく、部分にもまた五行があることを意味し、さらにこれをミクロにまで応用することができます。
逆に言えば、個の分類は全体の分類にもなるので、ミクロからマクロへの視点にも応用することができます。
ということは、全体と個とは、形態を異にしながら、実は同じ要素をまとった相似形の連続体であるということができます。
身体の内と外
肉体は、皮膚によって外界との境界を作っています。皮膚を境にして、身体の内と外を分けていますが、この内と外においても全体と個の関係があります。
身体の外は、自然環境です。身体という個にとって、自然は全体といえます。
上述したように、全体と個にはお互いを生かしあう関係がありますが、人間の個が自然全体に影響を与え、自然全体にもまた個に影響を与えるということで、ここから天人相関説が生まれてきます。
身体の健康とは、身体だけでは成り立たないところがあるのでしょう。
身体の外にある自然環境もまた健康でないと、本当の健康は保たれないのかもしれません。
自分の職場を一つの自然と考えたら、自分の家庭を一つの自然と考えたら、その一つ一つのワールドが、自分という個に影響を与えています。
この視点で見ていくと、自分が所属する環境に何が不足しているのか、また何が過剰になっているのかを見出すことができると思います。
また、個は全体に影響を与えますので、自分の普段の言動や行動が、周りにどれだけの有効に働いているのか、またその逆であるのか、この視点はこの生き方を見つめ直すものでもあります。
全体がダメだから自分もダメではなく、自分がダメだから全体もダメではなく・・・。
もともと身体に備わっている、“よりよく生きようとする生命力”を実感すると、全体を生かすため、そして自分自身も生かすために、個であり全体でもある自分自身を大切にすることができるのではないかと思います。