『逢沢りく』 ほしよりこ作

のほほん読んだ本 お薦め本(C)表参道・青山・原宿・渋谷エリアにある源保堂鍼灸院Tokyo Japan Acupuncture Clinic

 かなり前に患者様から薦められていた漫画です。
 なかなか購入する機会がなかったのですが、たまたま入った古本屋で上下巻が揃っていたので、躊躇なく即購入。ずっと探していたわけですが、ようやく出会った感じの上下巻。
 これがタイミングというものでしょうか。

都会の中学生のおはなし

 こちらのコミック『逢沢りく』の主人公は、タイトルそのままの“逢沢りく”。

 逢沢りくのプロフィールはこんな感じです(ネタバレになれない程度に)。

 逢沢りくは、東京に住む女子中学生。都会的なセンスを持つ両親に育てられ、何不自由もない生活を送っている。中流家庭というよりは、少しその上をいくくらいだろうか。
 金銭面などの生活上は何不自由もないが、母は少し偏った嗜好を持っている。オーガニックな食材のみしか使わない、テレビは観ない、いわゆる、“教育上良くない”とされるものは徹底的に排除する母。
 りくはその母に対して激しく否定したり拒絶しているわけでもない。小さい頃からそこに生活しているのだから、そこの生活がりくにとってのノーマル。そして、自分はノーマルに育ったつもりでいても、やはりそこは親子であるからには影響も受けているため、自分と世間とのズレのようなものを感じている。さらに、ややそこに、母のため、母が喜ぶためにと努めている自分がいる。そういった自分の存在そのものに気づきだした、その違和感。でも、そこを出ることもできないし、こんなものかと見た目はノーマル、そしてクール。

 そんな彼女が、大人の事情に振り回されながらも、自分の居場所をというものを見つけていく、普通なんだけど、普通じゃない、激しくないけど、激しく揺さぶられる、そんな物語。

中学生ってどんな世界なのだろう

 この漫画の主人公は、逢沢りくという中学生。
 まだ少女です。
 この設定こそが、まずとても大きな鍵なのかなと感じます。

 自分はもういい年したおじさんであって、しかも男です。
 なので、この主人公に自分をダブらせるというのは考えられないのですが、変な話なのですが、不思議と重ねるところが多くて、自分の中にもりくが感じている違和感が出てくるのです。違和感が出るというよりは、蘇ってくるといった感じでしょうか。そこがまず、なんだろうなぁと感じます。

 自分は中学生の頃は何もしてなくて、担任の顔すら思い出せないくらい記憶がありません。
 その記憶のなさ加減は異常なくらいですが、きっとこれは、りくが感じているような違和感を、自分もその頃感じていたのかもしれません。友達と話していても馴染めていない、たぶん、その頃は中学生らしいバカな話もしていたのかもしれないけれど、その場面を深く感じることなく時だけが過ぎていっていたのかもしれません。
 この感覚は、ひょっとして、りくが感じている違和感からきているのでは、そう、恐らく、そうなんだろう。

 小学生から中学生に上がる。
 小学生はまだ“こども、こども”している。どんなにませた小学生でも、どんなに頭がいい小学生でも、小学生はまだ“こども”だ。世間の扱いもまだこども。遊園地だって、美術館だって、プールだって、小学生であればこども料金だ。それがなぜか小学校を卒業して中学生になった途端に、大人になる。世間の眼だけではなく、自分の気持ちも“大人”になる。しかも一回りも二回りも大きくなった大人を感じるのだ。

 だけど、やっぱりまだそこは中学生。
 高校生ではないのだ。大学生でもないのだ。ましてや大人でもない。
 小学生に比べると、圧倒的に世間が拡がっていく。理解力も出てくるから、社会のことだってだいぶ知ることができる。そんなことが大人感を増す。
 でも、やっぱり中学生という域は出ていない。変な時代だなと改めて思う、中学生。

違和感はふとしたときに解き放たれる

 私だけではなく、それぞれにある違和感。
 それを解消することは難しいかもしれない。
 でも、気づいてあることはできる。
 そして、気づくことで解放される。

 鍼灸の鍼療をしていて思うことですが、自分の体の状況に気づきが生まれた方は、そこからの改善が早いように思います。自分の体がこれだけ悲鳴を上げていたんだなぁという気づきや、今までこんなことをしていて悪かったなぁという気づき、自分の体ががんばってくれていたんだなぁというエール。
 そういった気づきが出てくると、体は自分から変化していくように感じます。変なスピリチュアルなお話しではなくて、変化の法則とでもいったらいいのか、そういったところがあるように思います。

 何か分からないけど、日々感じている違和感。
 それってこんなところにあったんだなぁと気づいてあげることで、変化ははじまります。

 私の師匠がよく言っていました。
 「患者さんが良くなっても、自分の手でやってあげたとは思うなよ。患者さんが自分自身で治っていったんだから。わたしたちは、患者さんの自己治癒力を高めてあげている伴走者にすぎないんだ。」

 この言葉を胸に、私はそんなお手伝いをできたらなと思っております。
 患者さんが自分の心や体に感じている違和感を解き放つ、そんな役目ができたらと思っています。

大人の心にも響く

 話が逸れてしまいました・・・。

 『逢沢りく』です。

 この漫画の主人公は女子中学生です。
 たわいのない女子中学生の日常風景の漫画です。

 しかし、私たちの気づきは日常生活にしかないわけですから、そこにこそ新しい地平線が眠っているのでは。

 自分の世界を、少し飛び出してみる。
 不可抗力で出ざるを得ない状況であっても、少し飛び出したその先には、きっと何か新しい世界が拡がっている。そこにちょっとだけ気づくことができる、それが大きな変化へと結びつく。

 日常の中のちょっとした気づき、ちょっとだけど大きな気づきの大切さに触れることができる作品です。

瀬戸郁保 Ikuyasu Seto

源保堂鍼灸院の院長をしています。

“人生を楽しく過ごすこと” 、これが東洋医学の根幹にあります。
つらい症状で人生までもが暗くならないよう、豊かな人生のためのご相談にのれたらと願っています。

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