未病治療
健康と未病
東洋医学には、「未病(みびょう)」という言葉があります。これは、健康と病気の間にある状態で、何かしら不快症状があるが、まだ病気というほどでもない、かといって健康というほどすっきりしない・・・という状態のことを指します。
図にしてみるとこのような概念です。
この未病のとき、我々の体と心は、完全な健康とは言えませんので、当然ながら不快な症状が出てきます。しかし、このような未病の状態で病院などで検査しても、数値的な異常が出ないことが多く、病名も付かないことから、薬や処置もないことが多くあります。病院へ行っても、原因も分からず処置もない・・・しかし依然として不快症状が残り、その症状に悩まされ続ける・・・。こういう状況が続きますと、不安と不快感が募ってしまい、日々の生活全体が暗いものになってしまいます。そしてこの図を見てもお分かりいただけるように、健康と病気の間にある「未病」の範囲は広いものですので、病気だと思って病院に行ってみたところ、意外と処置がなかったり、検査結果に異常が出なかった場合の多くは、この未病にあたることが多くなります。
我々は、健康なとき、病気にならないように「予防」ということをします。例えば冬の季節ですと、風邪をひかないように手洗いやうがいをしますが、これは風邪にかからないためのもので、健康な状態にしておく「予防」になります。そしてもし予防をしていても、風邪になってしまったら、次に風邪薬を飲んで「治療」をします。
しかし、不快症状があるが健康とも病気とも言えないようなとき、風邪でいえば咽が少し痛い、頭が少し痛いというとき、まだ風邪の「治療」では行き過ぎで、またすでに症状が出ているので、単なる「予防」だけでは足りません。このようなときこそ、東洋医学の「未病」という概念を使うことで、この健康とも病気ともいえない「未病」の状態にアプローチすることができ、より積極的な「未病治療」を行うことができます。
今、風邪を例に上げましたが、風邪だけでなく、多くの病気の場合、健康から徐々に病気に向かっていくので、「未病」の状態が存在します。また、ちょっとした季節の変化などで身体がバランスを崩したとき、我々の心身は揺さぶられますので、健康状態を超えて、「未病」のゾーンに入ってしまうことが少なくありません。このように、「未病」は病へ向かうあまり良くない状態でありますので、「未病」のゾーンに心身が入ったときには、その「未病」の状態に合わせた、「予防」よりもより積極的な「未病治療」が必要となります。
また、病を未病の段階で治しておくことは、まだ体力もあり、自己回復力がある時期なので、心身の回復もまだありますので、治りも早いといえます。
未病を解説する『類経』(張介賓著)の本文。 (C)表参道・青山・源保堂鍼灸院右の写真は、今から500年前に書かれた『類経』という古医書の一ページで、ここでは『黄帝内経・素問』のある未病を解説しています。ちょうどこの写真の真ん中にあるタイトルに、しっかりと「治未病」と書いてあることが分かると思います。
このようにすでに東洋医学では、はるか昔からこの「未病」という身体の状態を捉えており、そして、この未病のうちに治療をしておきましょう、ということを記しています。
実際に、鍼灸治療を受け続けている当院の患者様方からは、「今年の冬は風邪をひきませんでした。」「今年は花粉症が楽です。」というように、予防+未病治療が功を奏し、体質改善ができたお声をいただきまきます。
鍼灸治療の良い面は、このように「未病」の段階から心身にアプローチをして、健康な状態に身体を戻すことができること、そして、治療を受け続けることで体質改善をし、病にかかりにくい身体を作る「予防」ができる、というように、「予防+未病治療」の両面をできるところにあります。普段から健康の幅を保ち、抵抗力をつけることができることにあります。東洋医学における身体の虚実、治療の補瀉を解説した図。 (C)表参道・青山・源保堂鍼灸院 どうか鍼灸治療を身近なものとして、日々の生活に取り入れ、「早く治せば、早く治る、未病の知恵」を合言葉に、健康な心身と充実した毎日を取り戻してみてはいかがでしょうか。