コラム東洋医学ってなに?(C)肩こり・腰痛・寝違い・頭痛・生理痛など源保堂鍼灸院Tokyo Japan Acupuncture Clinic

「医案」という書物

医案というジャンル

医案とは?

“東洋医学は鍼や漢方薬を使う伝統医療”という定義で言えば、東洋医学の発祥は中国にあります。
遺跡の調査などから、その萌芽は4000年も前に遡ることができると言われています。
その4000年前とも言われる頃から、多くの人の手を経ながら苦労を重ねて少しずつ体や病気に関する知識が蓄積されていき、明らかに書物としてまとまったはじめのものが、『黄帝内経(こうていだいけい)』というもので、2000年前に完成されたと言われています。

『黄帝内経』には、現代医学風に言えば、身体に関する生理学や病理学、そして臨床に向けた診断学、治療学などが著わされています。その後はこの『黄帝内経』を一つのバイブルとしながら、たくさんの医学書が書き上げられてきました。

医学書の中には様々なタイプがありますが、その内の一つが「医案(いあん)」と呼ばれるもの。
「医案」とは、症例や診療簿のことを言います。英語で言えばケース・スタディです。
どんな生薬を使って、どんな病気を治したか、どんな症状を以てどんな特長で患者さんがやってきたかなどが書かれています。

東洋医学の歴史の中で、最も有名な医案集が、清の葉天士が書いた『臨床指南医案』です。
タイトルにそのまま“医案”の文字が入っているので分かりやすいですね。

源保堂鍼灸院で所有している『臨床指南医案』はこちらのものです。

『臨床指南医案』清・葉天士
こういった古医書はすでに著作権はありませんから、中国ではいろいろな出版社から出ています。
当院が所有しているものは上海科学技術出版社から出ている古いもので、装丁も古風で気に入っています。

現代においても医案集は多数出ており、先日見つけたものはこちらです。

『当代明老中医・典型医案集』人民衛生出版社

タイトルにある“明老中医”とは、中国では有名な中医師の中の中医師。
日本で言えば人間国宝的中医師といった存在でしょうか。
そういった老中医師がどのような処方をして治療したか、そういった臨床例を集めたものです。
中を覗いて見ると、日本では扱っていないような生薬も散見されたり、逆にとてもスタンダードなもので治療をしていたりと、それぞれのケースがとても興味深く読むことができます。

そして更にもう一つ、医案がとても大切なものであることを伝える一場面がありました。

それはこちら・・・。

韓国ドラマで『ホジュン』というものがあります。
このドラマは、宮廷医官を勤め、『東医宝鑑』という書物をまとめ上げた医家ホ・ジュンの物語です。
物語の多くは創作だとは思いますが、ドラマの中にこんなシーンがあります。
それは、主人公のホ・ジュンが、医学書が納められている蔵が戦火に遭ったときに、猛火が迫る中で書物を持ち出す場面です。
そこでホ・ジュンは、「できるだけ鍼灸の本と診療簿(症例・医案)を優先的に避難させるんだ!」と叫びます。
国の書庫にあまたある書物の中で、診療簿(医案)を最優先で保護するというのは、これまで経験した医療の蓄積こそが学びになるという医家の真摯な姿勢の現れではないかと感じました。

臨床講座は医案の授業

3年間通った漢方薬の学校では、最後の授業に「臨床応用」という授業がありました。
どういったものかといいますと、医案を解くという趣向のものです。

先生が予め選んでおいた医案に対して、生徒それぞれが自分なりの答えを出し、それを先生が講評しながら添削するというもの。

例えばこのような医案が出されます。

医案・中医学臨床応用講座(C)肩こり・腰痛・寝違い・頭痛・生理痛など源保堂鍼灸院Tokyo Japan Acupuncture Clinic

そして生徒がこのように、自分なりの回答をしていきます。

医案・中医学臨床応用講座(C)肩こり・腰痛・寝違い・頭痛・生理痛など源保堂鍼灸院Tokyo Japan Acupuncture Clinic

例えば左上の方ですと・・・

中医学の病名が、「水滞・瘀血・気滞」。
そして、証候名が「腎陽虚」。
治法が「温補腎陽・利水・活血・行気」となります。
最後にある「右帰丸加茯苓、川芎」が処方名、つまり治療に使う漢方薬の種類ということになります。

生徒がそれぞれの答えを書いたあとは、順番にどうしてこのような診断をしたのか、そしてどうしてこのような処方にしたのか、そういった自分なりの答えを先生に伝えます。

そして、その意見を聞きながら、先生が医案についての解説や模範解答を示してくれます。医案・中医学臨床応用講座(C)肩こり・腰痛・寝違い・頭痛・生理痛など源保堂鍼灸院Tokyo Japan Acupuncture Clinic

講師は呉晨輝先生。
生徒の意見を尊重しながら、それぞれの回答に講評を加えてくれます。

生徒から出てくる方剤(漢方薬)は分かれることも少なくなく、どうしてその方剤を出したのかというそれぞれの視点は、いろいろな気づきをもたらしてくれます。
そしてもちろん、呉先生が導いてくれます回答も、とても勉強になります。

このような勉強を地道に繰り返していくことで、漢方薬の妙が身についてくる、そういった教材としても医案はとても大事なものになります。

私が通いました学校は、このような高度な勉強を学べるところです。
もし漢方薬に興味があるのでしたら、一度見学をしてみるのが良いと思います。
文京区の本郷にありますので、どうぞ足をお運び下さい。

[su_box title=”日本中医学院(旧名称:北京中医薬大学・日本校)” box_color=”#7ed400″]本格的に中医学を学びたい方のための学校です。
https://www.jbucm.com/[/su_box]

ちなみにこういった医案は鍼灸にもありまして、業界紙である『医道の日本』などには毎月症例が載っていたりします。
鍼灸もまた、こういった症例を通して、どういった意図でそのツボを使ったのか、どのような身体の診方をするのか、そういったことを学ぶことができます。

東洋医学は雰囲気で何となく学ぶものではなく、学問と技術をこのようにつなげていく作業の連続であります。
それが地道にできるかできないか、それがこの仕事に就けるかどうかの素質かと思います。
私のような不器用な人間でも、なんとか師匠に食らいついていった、その地道さがあったからこそこうして仕事として皆様に貢献できているのかなと思います。

まだまだ奥が深い勉強ですので、これからも精進あるのみであります。

漢方薬の取扱いのお知らせ

源保堂鍼灸院では、令和元年6月からイスクラ産業の漢方薬を取り扱うことになりました。
正直なところ、上述したような細かい加減はできないのでありますが、厳選された漢方薬の中からより患者様に適したものをご提供し、場合によっては2種類の漢方薬を使うという合わせ技もできます。
もし漢方薬の処方もご希望の場合は、お気軽に私たちにお伝え下さい。

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