『養生訓』を読む 第17回|心と体のポジションを戻そう
今回の『養生訓』は・・・
健康のためには、身体を休めることが大切。
そう考える人は多いかもしれません。
しかし貝原益軒は、『養生訓』の中で、
身体はむしろ「動かして労せしむべし」と語ります。
一方で、心(ここでは、こころ・精神と考えた方が良さそうです)については逆なことを言っています。
“心は静かに、安らかに保つべき”だというのです。
つまり、まとめますと、心と体は以下のような状態を保つのが良いというのです。
- 心は静かにしておく
- 身体は適度に動かす
東洋医学では、大まかに言って、体=肉体=血、心=こころ=気、という捉え方があるのですが、貝原益軒もこのことを養生の基本に据えているのではないかと思います。
この回の『養生訓』の要点
原文(巻之一・総論上・14章)
心は身の主也。しづかにして安からしむべし。身は心のやつこ(奴)なり。うごかして労せしむべし。心やすくしづかなれば、天君ゆたかに、くるしみなくして楽しむ。身うごきて労すれば、飲食滞らず、血気めぐりて病なし。
現代語訳
心(こころ)は身体の主人(あるじ)です。
そこで、主人たる心は、静かに、安らかに保つべきものです。
それは、身体は心に仕えるものだからです。
それに引き換え体は、適度に動かし、働かせるべきです。
心が穏やかで静かであれば、精神は豊かになり、苦しみ少なく楽しく生きることができます。
そして、心を宿す身体は、動かして働かせれることが大事です。
そうすることによって、飲食は滞らず、血や気が巡り、病気にもならないのであります。
心は静かに、身体は動かす
この章で益軒は、心と身体の役割を非常に明確に分けています。
シンプルにまとめてみますと、以下のようになります。
- 心は「静」を基調にする
- 身体は「動」を基調にする
これは益軒のオリジナルの考えではなく、東洋医学・中医学にもともとある、気血理論の根本になります。
身体・肉体は、気というエネルギーが通っていないと動きません。
心を代表とする気というエネルギーは、宿るべき肉体がないと、働きようがありません。
身体と気とは、どちらもお互いに存在し合うことで成り立つ存在です。
そしてそれぞれに、静と動という基調となる原則があります。
現代社会の逆を行け!
しかし、現代社会はどうでしょうか?
心はセカセカと動き、体は動かさないでじっとしている・・・。
これでは、心と体は、本来あるべきポジションの真逆にあるのではないかと思います。
情報・不安・刺激によって心が休まらず、
その一方で身体は座ったまま滞っていく。
本来のそれぞれのポジションを取り戻すべく、現代人に逆をしろと問いかけているように思われます。
源保堂鍼灸院の見解|気血の巡りのために
東洋医学では、 「気血は巡ってこそ健康」と考えます。
身体を動かさないと、どうなるか?
- 気が滞る
- 血が巡らない
- 消化も停滞する
一方で、心が常に緊張して静止していると、
- 自律神経が乱れる
- 呼吸が浅くなる
- 疲労が抜けない
という状態になります。
だからこそ大切なのは、
- 心は静かに休ませる
- 身体は適度に使う
というバランスです。
散歩でも、掃除でも、軽い運動でも構いません。
身体をほどよく動かすことは、巡りを整える養生になります。
まとめ
養生とは、ただ休むことではありません。
そして、ただ動かせばいいというものでもありません。
心と体が持っているポジション・特性をよく理解して、どちらもほどよく、ちょうどいい塩梅をうまく見つけていくことにあります。
しかし、これを机上の空論にならないようにするには、自分で実践することが大事になります。
自分が実際にやってみる、そういった自分の体と心の対話があってこそ、ほどよい自分なりの位置を見つけることができるのです。
心は静かに休ませ、身体は適度に動かして巡らせる。
この「静」と「動」の調和が、健康を支える基本なのです。
心は静かに。
身体は、よく動かす。
FAQ よくある質問と答え
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参考図書
定本として『養生訓・和俗童子訓』(岩波文庫)を使用
『養生訓』に関連する本

源保堂鍼灸院・院長
瀬戸郁保 Ikuyasu Seto
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
東洋遊人会・会長/日本中医会・会長/東洋脉診の会・会長
東洋医学・中医学にはよりよく生活するための多くの智慧があります。東洋医学・中医学をもっと多くの方に身近に感じてもらいたい、明るく楽しい毎日を送ってほしいと願っております。
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