「節」のお話し
節とは?
二十四節気について
源保堂鍼灸院では、二十四節気という季節の巡りをとても大切にしています。
(今回のお題目は「節」ですので、二十四節気について紙面を多く割くことはできませんが、触れないわけにはまいりませんので、軽く触れておきます。)
では、“とても大切にしている”というのはどういうことでしょうか?
一般的に二十四節気と申しますと、ふつうは、天気予報で出てくるような季節の区切り、または花鳥風月のような季節を愛でる時候の挨拶のように捉えられていると思います。しかしこの程度のお話しですと、“二十四節気を大切にしている”といっても、院内の飾り付けなどに気を配っているくらいの印象で終わってしまいます。
しかし話はそうではないのです。
体は二十四節気とともに変化していきますので、その変化に応じてツボを変えたり、養生の方針を二十四節気に合せたりという工夫を鍼灸の鍼療のなかで表現しているのです。単に季節が変わったよーという合図ではなく、体も変化をしているという区切りとして二十四節気を利用しています。
そもそも二十四節気とは太陽と地球の位置関係で決まるもので、季節の巡りを表現したものです。
特に人類が農耕をはじめるようになってからは、農業のための暦として発達したともいわれています。
そして恐らく、当時のお医者さんが、私たちの人体もまた、この二十四節気とともに変化をしていくことを観察し、そしてその巡りに合せていくことが健康の秘訣になることを見出したのだと思います。
私たち人間もまた自然の一部ですから、それは当然といえば当然のことなのですが、現代に住む私たちは、ふだん自然とはかけ離れた生活をするようになってしまい、私たちはいつの頃からかその感覚を失ってしまったのかもしれません。
「節」は竹が語源
前置きが長くなってしまいました・・・。
節という漢字の語源は、竹の「節(ふし)」だそうです。
所々に竹には節があります。
この竹の節が離れている間隔が区切りをイメージさせて、時間軸の区切りもまた「節」という漢字に当てはめたのかもしれません。
人生の大きな転換期となる区切りのことを「節目」と言ったり、文章の一区切りや段落を「章節」と言ったりします。
このように、「節」には“区切り”のことを指すのが最初の語源・語感ということになります。
節によって強くなる
関節という「節(ふし)」
竹は、この節があるから強い構造になっているといいます。
人間の体には関節という節があります。
この節があるからこそ体はいろいろな動きをすることができます。
逆にこの節を傷めると腰痛になったり、肘痛になったりします。
そういう意味では、関節もまた構造を強くする節であります。
礼節という「節(ふし)」
人間関係の中にある礼儀のことを礼節といいます。
最近ではこういった秩序のようなものを嫌う人もいるかもしれませんが、これまで話してきましたように、“節があるから強くなる”という発想でいきますと、礼節は人間関係を強くするものと理解することもできます。
“衣食足りて礼節を知る”といいますが、一般的には衣食という人としての最低限の生活が維持されることにより、ようやく礼儀を尽くすことができる、と解釈されますが、“節(せつ)”の語源から考えると、衣食が足りるだけではまだまだ強い人間にはなっていないよ、ということなのかなと思ったりもします。礼節の必要性を感じたときに、衣食も足りるようになり、礼節を実践できるようになると、さらに衣食が安定するという意味も服まっているのかもしれません。
私自身、鍼灸師として食べていけない頃は、日々の生活をするのがようやくで、礼儀なんていう発想は生れませんでした。
しかし少しずつ鍼灸師という立ち位置を見つけていく中で、周りの人々に礼節を尽くすことを心がけていくことで、さらに鍼灸師としての腕も上がってきたような実感があります。
季節の行事は人間関係を強くする
1年12ヶ月、1月1日のお正月から始まり、節分、桃の節句、端午の節句など、日本の一年には様々な“節”があります。
今は廃れてしまったものもあるかと思いますが、地方にある神社仏閣などにもお祭りという形で、節をお祝いする行事が遺っています。
こういった季節毎にある“節”を大事に行っていくことは、その地域の結びつきを強くする意味合いがあります。
そしてこのような節を大切にすることは、巡り巡って自分に返ってくることでもあります。
“親しき仲にも礼儀あり”ともいいますが、礼儀=礼節と解釈すれば、友達の間柄であっても、お互いを尊敬したり、お互いのライフイベントの中で贈り物をしたりすることは、お互いの結びつきを強くする節になります。
仲の悪い状況にあっても、この節の意味を知ると、嫌々ながらもでもちょっとばかりでも、たとえ心ばかりのひと言でもかけておくと少しずつ強さが出てくるのかもしれません。
めんどくさいなぁ~という行事でも、節目となるものは自分の区切りにもなりますし、それもまたライフイベントの積み重ねとしていろいろな意味で強くしてくれるでしょう。
ということで、お節料理を食べる、節分で豆まきをする、記念日にプレゼントをして節目を祝う、そんな時間の流れの中での節という区切りを愛おしむことで、この人生はもっと豊かになるのかなと思います。
私もそれに気がついたのは、ほんとに今日この頃です。
あのときは遊びに行けないから嫌だなぁと思っていた地域の行事、ムダだと思っていた形だけの礼節。
しかしムダではないのですよね、後々になって自分を助けてくれるんですよね。
形でもいい、形だけでもやること、形を整えればそれが結果として礼節なんだということ。
もっと早くからこのことが分かっていれば、もう少し円滑な人生を歩めたのかなと思いつつ、これからはちゃんと日々の節を大切に、人間関係の節を大切にしていきたいと思っています。
もうすぐ2月3日の節分がやってきます。
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