『謝謝、北京!ー北京研修日誌(3)』脳神経科
脳一科へ
昼食を挟んで午後からは、脳一科。
脳一科とは、日本で言えば「神経内科」。
担当の先生は、李世強先生。
とても穏やかで、冷静沈着な感じです。
ひとつひとつ丁寧に教えてくれます。
しかし、写真は苦手なのか、カメラを向けるのがはばかれるところもありましたので、あまり撮る機会がありませんでしたので、今回はあまり写真はありません・・・。
中風(脳卒中)、眩暈(めまい)の治療に
先生のお話によると、こちらの脳一科が扱う症状は、「中風(脳卒中)」と「眩暈(めまい)」が中心とのことでした。
中国では、中風の治療のために、検査にMRIやCT、西洋医学としてはアスピリン、そして中医学では鍼灸と漢方薬を使用するそうで、さらにそれらをより活かすために、様々な手法が活用されています。
このような簡単な説明を受けた後、入院患者さんのところへ案内してもらい、患者さんの脈診や舌診をさせていただきました。
入院患者さんの症状の重さはそれぞれで、かなり重い方もおりまして、萎縮した舌に、意識レベルも低くなっている方もおりました。
脈を診ても、沈細とあまり脈を感じられない方、逆に尺中の脉が高くなってしまっている方なども。
さまざまな状況にある入院患者さんに対して、中医学はとことん全力でサポートしていきます。
この姿勢がとても感動的です。
李先生のお話ですと、中風になる原因は・・・
- 気滞
- 瘀血
- 痰湿
細脈を打っている場合は、気虚や気滞が重くなっている方という説明を受けました。
気滞、瘀血、痰湿など、現在の日本でもよく見られるものですので、気をつけて養生をしたいものですよね。
中風は長期化することが多く、補気と化瘀を治療の主軸にするようで、補陽還五湯がメインになるとのこと。この辺りは私たちも学校で習ったことでありました。ちなみに、補陽還五湯は「黄耆、当帰、芍薬、地竜、川芎、桃仁、紅花」が含まれます。
こちらのカルテは補陽還五湯ではありませんが、入院されている患者さんは、このように詳細なカルテが残されます。
様々なサポート
脳一科では、中風の患者を様々な角度からサポートしており、大きな成果を上げています。
そこで、今回教えていただいたサポート方法を掲載します。
超音波薬物導入
これは、生薬が染み込んだシートに超音波をかけて、経絡からその薬効を流し込むという器具。
中風の患者さんは、症状として便秘などにもなりやすいのですが、それを緩和させるための枳実、大黄、白朮などが入っているようです。その他にも健脾用などもあるとか。日本にはこのような器具はないと思うので、どこまで効果があるのか知りたいところであります。
竹で作った水罐
前回のブログで、抜罐・吸玉・吸角と呼ばれるガラスのカップで皮膚を吸引するものをご紹介しましたが、こちらの脳一科で見せていただいたのは、竹で作った水罐でした。
残念ながらシャッターチャンスを逃してしまいまして、水罐の写真はございませんが、装着する前に、このようにツボを確認していきます。
この写真は、李先生の合谷を看護師さんが確かめて、水罐をしようとしているところです。
ネットで探してきたものがこちらです。
竹で作った筒を、吸角のように取り付けていきますが、脳一科で見せてもらったものは、この写真のものよりもかなり小ぶりなものでした。
さらに、ここでは用途に合わせた漢方の生薬に竹筒を染み込ませて使用します。
例えば活血化瘀のためには大黄や枳殻、川芎などを使ったりするそうです。
TCD
これは写真がないのですが、首と頭の付け根にある風池というツボの辺りにエコーのようなものを当てて、血管の太さを測るもの。
モニターに映し出された波形で、脳への血管の太さが分かるというもの。
ちなみに私は実験台として受けてみましたが、十分血流がいっているといわれてホッとしました・・・。
薬枕
これも写真がないので恐縮ですが・・・。
中風の後遺症や、めまいの不随症状として不眠や鬱病を併発することが多いということで、その方のために生薬が入った枕もあるそうです。
このような後遺症は、肝鬱で起きることが多いので、疏肝作用のある薄荷を用いるのがいいと李先生は教えてくれました。
鍼灸
何人かの患者さんを見て回ったときに、李先生がおもむろに針治療をはじめました。
これがまた簡単にと言いますか、無造作にと言いますか、ぱっぱっぱっと決めうちをしていく模様でした。
そこで、「どんなところに針をするんですか?もう針をするところは決まっているんですか?」と聴きますと、
李先生は、さも当然だろう?といった表情で、
「決まってるさ。北京中医薬大学で行う中風の後遺症の針は、“手足十二刺”というんだよ。
知らないの!?」と言われまして・・・。
正直知らなかったので、それは何ですか?と重ねて尋ねますと、李先生はスマホで調べてくれまして、賀普仁先生という国医大師の写真を私たちに見せてくれました。
賀普仁先生は既に故人でありますが、針灸の大家。
私は全く存じ上げておりませんでした・・・。
国医大師(人間国宝のお医者さん)だというのに!!
(流派が異なると、本当に知らないこともあります・・・)
この賀先生が中風の後遺症として推奨したのが、手足のツボを使う“手足十二刺”と呼ばれるもの。
そのツボの内訳は、
太谿、照海、太衝、曲池、合谷、陽陵泉、足三里、三陰交、内関、崑崙、申脈・・・
うーーん、あと一つが思い出せないです・・・すみません。
で、後日、北京滞在中に本屋に行きまして、探しましたよ。
賀普仁先生の本。
しかし本屋さんでは時間がなかったので、中身を吟味することもなく、もうとにかく目についたので購入!という感じでした。でも、そんな中でも、この本には賀先生の経歴が書かれていて、基本的な医案のようなものも載っておりまして、なかなかよいチョイスができたかなと。
でも・・・
最近この記事を書くに辺りいろいろ調べてみましたら、日本でも賀先生の翻訳本が出ていることを発見。
そして、なんと、賀普仁先生の息子さんは日本で鍼灸師をされているようです。
息子先生のお名前は、賀偉先生。
日本に留学されてそのまま日本で開業したそうです。
何とこんなにも近いところにいらっしゃるとは!
以上のように、日本で言う神経内科においても、中医学は、中医学のあらゆる手段をフル活用して患者さんの治療に当たります。
そのおかげで、中風の後遺症から立ち直る人も多いそうです。
やはりこのような、“何でも活用する”姿に感動ですね。
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