お「灸」という字
お灸の意味とは?

「灸」に込められ意味
お灸という字は、「久」と「火」から成り立っています。
この組み合わせは、単なる表記ではありません。それ以上の意味を含んでいます。
それは以下のような意味。
「久」=長期間という意味を表しており、「お灸は長い期間をかけてすえていくものですよ」というお灸をすえる価値を説いているのです。
お灸とは何か:東洋医学の実践法として
お灸とは、正式名称としては「灸療法」「もぐさ療法」といったものがあります。
その方法は、乾燥させたヨモギの葉から作られたモグサを、古来から伝わるツボや、打撲や怪我をしたその症状のある患部にのせて火をつけ、その熱刺激で体や心の不調を改善していく伝統医療の技法です。
熱刺激ですので、冷え、そして血行の改善をはかり、さらに、洋医学・中医学では一般的な概念である氣(気・Qi)」を調整して心身のバランスを整えることを目的としています。
この療法は、鍼灸の発祥地である中国をはじめ、日本・韓国、そしてベトナムやモンゴルなどで、東アジア圏における伝統医療として用いられてきました。地域によって使われ方や道具・技法の細部は異なりますが、根底にある考え方は共通しています。
お灸と鍼の関係
俗に「鍼灸院」「鍼灸師」と、本来別物であるべき鍼とお灸を一つのセットとして言ってしまいますが、それは、お灸も鍼も、どちらも伝統医療の枠にあり、ツボを利用するという共通点があるので、まとめて扱われることが多くなります。
この背景には、もともと灸と鍼の相性が良く、併用した方のがお互いが補完的に働くため、効果が高くなるということが経験からもわかることで、早い段階から一体のシステムとして使われてきたからだろうと推測されます。
その違いを具体的に述べれば、鍼が鍼という道具によって物理的な刺激を与えるのに対し、お灸は熱という熱刺激で体を調整するという違いがあります。古典医学書やはりきゅう理論の中では、どちらも経絡(経穴:ツボ)や氣の流れに働きかける手段として講義されています。
どちらかというと鍼の方がより本格的で、お灸は民間療法の一つとして身近な存在と感じられているのではないかと思います。実際に、古典医学書などを読んでみますと、鍼の記述の方が圧倒的に多い傾向があります
お灸療法の背景と思想的な捉え方
東洋医学の根底にあるのは、「全体をひとつの有機的なシステムとして捉える」という考え方です。これを中医学では整体観念と言ったりします。
このような観点から考えてみると、お灸は単なる「熱刺激」ではないのではないかと感じます。鍼灸師として仕事をしていて、多くの患者様の体の変化を観察していると、お灸は生命活動の根幹に関わるバランス調整のための手段であると断言していていいのではないでしょうか。
冒頭に述べましたように、漢字の成り立ちにも古来よりお灸へのその感覚があらわれているのではないでしょうか。「お灸は体の調整を“長い時間をかけて積み重ねるもの”、そしてその結果、私たちの体と心が持つ生命活動を高いところで維持できるものである」と捉えることができます。このお灸が持つ特徴は、そのまま東洋医学の特徴にもなり、ひいては予防医学の考え方とも一致していきます。病気になってしまった体や心を根本的な生命力というところから改善し、そして体質を変えていくことを目標としているのがお灸であります。
今日の視点:伝統から現代へ
現代ではお灸も様々な形で発展しています。
直接肌に接触させる古典的な方法から、間接的に熱を加える方法、さらには専用具を用いた安全性の高い施術方法まで、多様なバリエーションが存在します。
一方で、西洋医学の視点からは効果検証が十分に進んでいるとは言えず、一部地域では補完医療として扱われることもあります。とはいえ、千年以上にわたって人々の健康維持に用いられてきた文化的・歴史的価値は非常に大きいと言えるでしょう。
まとめ:漢字一文字に込められた叡智
「灸」という一文字は、単なる治療法を超えて、東洋医学全般の考え方、継続的な健康管理とバランスの追求という哲学を象徴しています。歴史、文化、思想、そして身体観までもが、この一字に集約されているのです。
東洋医学の特徴の一つは予防医学です。それは、病にかかりにくい身体に体質を改善していくこと、または大きな病になる前に小さな病のうちに治療をしていく、という考え方です。お灸という漢字は、お灸は少しずつ長い期間かけてすえていくことで、その効果がだんだんと身体に積み重なっていくことを我々に教えてくれています。はるか昔の先人達が発明してくれたこのシンプルな治療法。昔の先人がその本質を喝破して表現した漢字の成り立ちとともに、この医療の大切さをご理解していただきたいと思います。
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源保堂鍼灸院・院長
瀬戸郁保 Ikuyasu Seto
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
東洋遊人会・会長/日本中医会・会長/東洋脉診の会・会長
東洋医学・中医学にはよりよく生活するための多くの智慧があります。東洋医学・中医学をもっと多くの方に身近に感じてもらいたい、明るく楽しい毎日を送ってほしいと願っております。
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