『養生訓』を読む 第14回
内気を充実させること
原文(巻之一・総論上・10章)
風・寒・暑・湿は外邪なり。是にあたりて病となり、死ぬるは天命也。聖賢といへど免れがたし。されども、内気実してよくつつしみ防がば、外邪のおかす事も亦まれなるべし。飲食色慾によりて病生ずるは、全くわが身より出る過也。是天命にあらず、わが身のとがなり。万の事、天より出るは、ちからに及ばず。わが身に出る事は、ちからを用てなしやすし。風・寒・暑・湿の外邪をふせがざるは怠なり。飲食好色の内慾を忍ばざるは過なり。怠と過とは、皆慎しまざるよりおこる。
現代語訳
風・寒さ・暑さ・湿気は、外から身体を侵す「外邪」です。
これにあたって病となり、命を落とすことは天命であり、聖人や賢者であっても免れることはできません。
しかし、内なる気が充実し、よく慎み、防ぐならば、外邪が侵すこともまた少なくなるでしょう。
飲食や色欲によって生じる病は、まったく自分の内から出た過ちです。
これは天命ではなく、自分自身の責任です。
天から来るものは力の及ばないことですが、
自分の内から生じることは、力を用いて改めることができます。
風・寒・暑・湿という外邪を防がないのは怠りであり、
飲食や好色の欲を忍ばないのは過ちです。
怠りと過ちは、どちらも慎まないことから生じます。
解説
「天命」と「自分の過ち」を分けよ
益軒は、すべてを自己責任にしていません。
- 自然災害のような外邪は「天命」
- しかし、内慾による病は「自分の責任」
という非常に合理的な区別をしています。
これは現代で言えば、
- 流行病や環境要因はコントロールできない
- しかし、暴飲暴食や過労はコントロールできる
ということです。
そして彼は、さらに踏み込みます。
天より出ることは力が及ばない
わが身に出ることは力を用いて改めやすい
つまり、
変えられないものより、変えられるものに力を使え
という、実践的な思想です。
まとめ 源保堂鍼灸院の見解
東洋医学では、
- 外因(外邪)
- 内因(七情・過度の欲)
- 不内外因(生活習慣など)
という分類があります。
益軒のこの文章は、その考え方と完全に一致しています。
重要なのは、
外邪はゼロにはできないが、
内気を充実させれば侵されにくくなる
という視点です。
つまり、
- 睡眠
- 食事
- 節度
- 心の安定
これらは「免疫力」「抵抗力」にあたるものです。
そして彼は最後に言い切ります。
怠と過とは、皆慎しまざるよりおこる
怠(怠慢)と過(やりすぎ)。
どちらも共通点は「慎みがない」こと。
養生とは、極端を避ける技術なのです。
最後に、この章の一文を掲げておきます。
わが身に出る事は、ちからを用てなしやすし。
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参考図書
定本として『養生訓・和俗童子訓』(岩波文庫)を使用
『養生訓』に関連する本

源保堂鍼灸院・院長
瀬戸郁保 Ikuyasu Seto
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
東洋遊人会・会長/日本中医会・会長/東洋脉診の会・会長
東洋医学・中医学にはよりよく生活するための多くの智慧があります。東洋医学・中医学をもっと多くの方に身近に感じてもらいたい、明るく楽しい毎日を送ってほしいと願っております。
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