〖今週のひとこと養生訓〗蓄積熱中症に注意!?|立秋を過ぎても油断できない夏の養生

この記事の要点
イントロ | 暑さは、一日で終わらない
今年は8月7日から暦の上では「立秋」に入りました。
今年は暦通り、立秋を境に夏の暑さも潮目が変わったように感じますね。とくに夕方以降はだいぶ暑さの質が変わってきたようですね。
とは言え、まだ8月です。
入道雲はぐんぐん育ちますし、日中の陽射しや空気はまだ夏そのものです。
この時期に気をつけたいのは、これまで暑さにさらされて体内に蓄積してきた蓄熱です。
私たちの体は、初夏から1ヶ月以上にわたって暑さにさらされてきました。
強い陽射しに照らされて汗をかき、夜は夜で熱帯夜の中で眠りにくい夜を過ごし、そして冷房の効いた室内と炎天下を行き来しているうちに、少しずつ少しずつ熱が体内に蓄積してきています。そしてその熱があることで疲れが取れにくく、疲れもまた少しずつ積み重なっています。
蓄積熱があるときは、「朝は普通だったのに、少し外を歩いただけで頭が痛い」「朝から身体が重い」「いつものように動けない」といったことが起きやすくなります。そして、「ちょっと外を歩いただけでも頭痛がする」といったような、熱中症の初期症状がすぐに出るようになります。
このような変化を感じたら、「これくらいなら」と見過ごさないことです。
盛夏を越えた身体は、私たちが思う以上に長いあいだ暑さと付き合ってきました。
今週は、その「積み重なった暑さ」、つまり“蓄積熱中症”に目を向けて養生をしていきましょう。
※ 「蓄積熱中症」とは、源保堂鍼灸院が、日々の臨床と東洋医学の視点で分かった、夏後半に特有に起きる熱中症を分かりやすくお伝えするために考えたオリジナルの言葉です。
今週のひとこと養生訓
立秋を迎えても、身体の夏はまだ終わらない
二十四節気の立秋は旧暦を基にしているため、現在利用されいている新暦とはズレが生じます。そのため、立秋が来るからといって、気温がすぐに秋らしくなるとういわけではありません。では、どれくらズレがあるかと言うと約1ヶ月。つまり、実際に秋が来たなと感じるまでに1ヶ月はかかります。そこで、“季節が夏から秋へ向かい始める節目”と言うくらいに捉えておくとちょうどいいものです。
しかし、暦が1ヶ月先へ進んでいるからといって、立秋という道標が無駄にあるわけではありません。むしろ、“秋が来た”ということを1ヶ月早く感じることによって、未来のための養生ができることになりますので、大いに活用する価値があります。
夏の始まりには、まだ暑さに慣れていない身体をどう夏へ適応させるかが大切でした。源保堂でも初夏には「汗をかく力」を養うことを取り上げてきました。
ところが夏の後半になると、事情が少し変わります。
夏後半は、夏の始まりと同じような暑さへの適応だけではなく、他の要素も考えなくてはいけません。それをまとめると以下のようになります。
- 1ヶ月以上続いてきた高温
- これまで流してきた大量の発汗
- 睡眠の乱れ
- 疲労の蓄積
- 食欲の低下
- 身体全体の消耗
夏の入口と夏の出口では、同じ暑さでも身体の受け止め方が違うのです。
「蓄積熱」という見方
今回の『ひとこと養生訓』で提唱する「蓄積熱中症」という言葉は、正式な医学的診断名としではありません。これは、源保堂鍼灸院のオリジナルの言葉です。26年間の臨床経験と、深い東洋医学の学術から考察して行き着いた概念です。
上述したように、夏後半は体の条件が変わってきているため、ここで一回ギアチェンジをして暑さへの対応をしなくてはいけません。
そこで、暑さそのものに加え、長く続いた暑熱環境による疲労や消耗が重なった状態に注意しようという意味で、これを「蓄積熱中症」として提唱しています。
東洋医学では、身体はその瞬間だけを切り取って診るものではありません。何を食べ、どのように眠り、どれほど汗をかき、どの季節をどう過ごしてきたのか。その積み重ねが、いま目の前にある身体をつくっていると考えます。夏の熱も同じです。昨日たくさん休んだから、今日からすっかり元通り、とはいかないことがあります。盛夏の終盤だからこそ、身体に残っているものを丁寧に見ていきたいところです。
頭痛やだるさを「夏だから」で片づけない
熱中症では、めまい、立ちくらみ、頭痛、吐き気、倦怠感など、さまざまな症状が現れることがあります。ここで怖いのは、最初から誰もが倒れるわけではないことです。「少し頭が痛い」「今日は妙に身体が重い」といった変化から始まることもあります。とくに炎天下を歩いたあとや、暑い室内で長時間過ごしたあとにいつもと違う症状が出たなら、根性で動き続ける場面ではありません。涼しい場所へ移動し、衣服をゆるめ、身体を冷やし、水分・塩分を補う。意識がおかしい、自力で水分が取れない、症状が強い、改善しない場合には、速やかに医療につなげる必要があります。「蓄積」という言葉を使っていても、実際に熱中症が疑われる場面では養生より安全確保が先です。
冷やすことと、養うことは違う
身体に熱がこもったとき、冷房を使い、必要に応じて身体を冷やすことは大切です。しかし、夏の終盤の身体を整えることは、ただ冷やせば終わりではありません。冷たい飲み物や氷菓ばかりを重ねれば、胃腸が疲れて食事が入らなくなることもあります。すると、暑さを乗り切るために必要な力まで補えなくなります。ここで考えたいのは、熱を逃がしながら、消耗したものを戻していくこと。水分をとる。汗をかいた分の塩分にも気を配る。食事をとる。眠る。そして、必要なときには冷房をきちんと使う。一つの方法だけで夏を乗り切ろうとせず、身体の出入りを整えていくことが、残暑の養生になります。
夏野菜の力を、食卓に借りる
この時季の食卓には、夏を過ごすための食材がまだ豊富にあります。きゅうり、トマト、なす、ゴーヤなど、みずみずしい夏野菜は、暑い時季の食事に取り入れやすいものです。東洋医学や薬膳では、季節の熱をさます方向に働く食材もあり、暑さの残る時季の食卓に役立ててきました。ただし、「これを食べれば熱中症にならない」という話ではありません。食材は薬の代わりではなく、日々の身体を支えるものです。冷たいものを大量に食べるのではなく、ご飯や汁物、たんぱく質などと組み合わせ、普段の食事の中へ夏野菜を添える。そのくらいが、養生として長く続きます。スイカについては、源保堂でも盛夏の熱をさばく食養生として紹介しています。
夏の終わりこそ、身体をよく見る
暑さの盛りには誰もが暑さを警戒します。日傘を差し、水筒を持ち、天気予報の最高気温を気にする。ところが立秋という言葉を聞く頃になると、気持ちのどこかに「もう夏も後半だから」という油断が生まれます。けれど、身体にとっては、ここまで暑さの中を歩いてきた時間があります。季節の変わり目とは、次の季節だけを見る時ではありません。過ぎてきた季節が身体に何を残したかを見る時でもあります。残暑を元気に越えることが、そのまま秋への支度になります。
巻末まとめ|立秋は、暑さの終わりではない
立秋を迎えても、夏の養生はまだ終わりません。むしろ初夏から暑さを受け続けてきた今だからこそ、身体に残った疲れや熱を見過ごさないことが大切です。頭痛やめまい、だるさ、吐き気など、いつもと違う変化があれば早めに休み、熱中症が疑われるときは適切に身体を冷やし、水分・塩分を補いましょう。そして普段の食卓では、旬の夏野菜も味方につける。暦は秋へ向かい始めました。しかし、身体は暦より少しゆっくり季節を歩いています。夏を最後まできちんと過ごすこと。それが、秋を健やかに迎える最初の養生です。
あれだけ暑かった夏も、立秋をすぎると少し潮目が変わって秋を感じる日も出てきます。しかし体にはこれまでの暑さが蓄積されていますので、夏前半とは違った対策が必要となります。夏後半をつつがなく過ごすためにも、今一度養生を心がけてください。
心身のメンテナンス
日々の養生
想生・想身・想心
私たちの体と心はいちばんの宝ものです。
長い人生の旅路をともにする心身を、整え過ごすために、体と心にやさしい鍼灸をお奨めします。

FAQ
「蓄積熱中症」という病名があるのですか?
立秋を過ぎれば熱中症は減りますか?
夏野菜を食べれば身体の熱を取れますか?
熱がこもっている感じがするとき、冷たいものをたくさん取ればよいですか?
どのような症状なら医療機関を受診した方がよいですか?
For English Readers
Accumulated Summer Heat: Why You Still Need to Be Careful After Risshū
round August 7, the traditional East Asian calendar enters Risshū, the beginning of autumn. Yet in modern Japan, the heat is far from over. By this point, the body has already spent weeks coping with high temperatures, heavy sweating, warm nights, air conditioning, and changes in appetite and sleep.
In this article, we use the phrase “accumulated heat” not as an official medical diagnosis, but as a way of paying attention to the fatigue and physical strain that can build up over a long, hot summer.
Headache, dizziness, nausea, unusual fatigue, and weakness can be signs of heat-related illness. Do not dismiss them simply because summer is nearing its end. Move to a cool place, rest, cool the body when necessary, and replace fluids and electrolytes. Severe symptoms, confusion, or inability to drink require prompt medical attention.
From the perspective of East Asian medicine and seasonal nourishment, late summer is also a time to support the body through everyday meals. Tomatoes, cucumbers, eggplants, bitter melon, and other seasonal vegetables have long been enjoyed during hot weather. They are not treatments for heatstroke, but they can be part of a balanced summer diet.
Risshū reminds us that the season is beginning to turn. The calendar may already be moving toward autumn, but the body needs time to follow. Caring for the final stretch of summer is also the first preparation for autumn.
【おすすめの漢方薬】
この季節におすすめの漢方薬・漢方レメディ
夏の終盤には、暑さそのものだけでなく、長く汗をかいたことによる消耗、食欲の低下、胃腸の弱り、睡眠不足などが重なっていることがあります。漢方では、同じ「夏バテ」「暑さが抜けない」という訴えであっても、その人の身体に何が不足し、何が滞り、どこに負担がかかっているのかを見て処方を考えます。そのため、ここでは特定の処方名を挙げません。市販の情報を見て症状だけで漢方薬を選ぶよりも、夏をどのように過ごしてきたかまで含めて身体を診てもらうことが大切です。毎年夏の終盤になると調子を崩す方、暑さが去ってもなかなか体調が戻らない方は、漢方に詳しい専門家へご相談ください。
漢方薬は、個々の体質に合わせた処方が大事になります。
当院をはじめ、漢方薬に詳しい漢方薬重視の薬局・薬店・ドラッグストアでのご相談をお勧めいたします。また、漢方薬は、変化する体質や時期によって変えていくこともありますので、定期的な受診をお勧めいたします。
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源保堂鍼灸院・院長
瀬戸郁保 Ikuyasu Seto
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
東洋遊人会・会長/日本中医会・会長/東洋脉診の会・会長
東洋医学・中医学にはよりよく生活するための多くの智慧があります。東洋医学・中医学をもっと多くの方に身近に感じてもらいたい、明るく楽しい毎日を送ってほしいと願っております。






