『養生訓』を読む 第6回
命は天地父母からの授かりもの
原文(巻之一・総論上 2章)
園に草木をうへて愛する人は、朝夕心にかけて、水をそそぎ土をかひ、肥をし、虫を去て、よく養ひ、其さかえを悦び、衰へをうれふ。草木は至りて軽し。わが身は至りて重し。豈我身を愛する事草木にもしかざるべきや。思はざる事甚し。夫養生の術をしりて行なふ事、天地父母につかへて孝をなし、次にはわが身、長生安楽のためなれば、不急なるつとめは先さし置て、わかき時より、はやく此術をまなぶべし。身を慎み生を養ふは、是人間第一のおもくすべき事の至(り)也。
現代語訳
庭に草木を植えて大切に育てる人は、朝夕に気を配り、水をやり、土を耕し、肥料を与え、害虫を取り除きます。そして、成長を喜び、枯れてゆくことを悲しみます。草木の命はとても軽いものです。しかし、私たちの身体はとても尊く重いものです。どうして自分の身体を草木以下に扱ってよいでしょうか。まったく思慮の足りないことです。養生の術を知り、それを実践することは、天地と父母に孝を尽くすことにつながり、次には自分の長寿と安楽のためになります。だからこそ、急がない務めは後回しにして、若いうちから早くこの術を学ぶべきです。身を慎み、命を養うことは、人として第一に重んじるべきことであるのです。
解説
養生も、“継続は力なり”
この段では、草木の世話と人の身体を養うことを比較することで、養生の重要性を説いています。草木でさえ毎日の世話を欠かさないのに、より尊いはずの人の身体を放置するのは愚かだ、と強く戒めています。
また「若いうちから学ぶべき」とあるのは、年をとってからではなく、まだ元気で余裕がある時期に習慣として養生を身につけるべきだ、という教えです。
まとめ 源保堂鍼灸院の見解
養生を「庭いじり」にたとえているのは、とてもわかりやすい比喩ですね。植物は毎日の水やりを怠るとすぐに枯れてしまうように、人間の身体も日々の積み重ねが大切です。鍼灸の立場から見ても、体調を崩してから治療するより、日々のバランスを整えておくことのほうがずっと効果的であるといえます。
特に印象的なのは「若き時より、はやく此術をまなぶべし」という部分です。現代人は不調が出てから「健康」を考える傾向がありますが、予防こそが真の養生です。この考え方を現代の生活習慣(食事・睡眠・ストレス管理など)にどう活かすかが、私たち鍼灸院でも大切にしている視点です。
定本として『養生訓・和俗童子訓』(岩波文庫)を使用
『養生訓』に関連する本

源保堂鍼灸院・院長
瀬戸郁保 Ikuyasu Seto
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
東洋遊人会・会長/日本中医会・会長/東洋脉診の会・会長
東洋医学・中医学にはよりよく生活するための多くの智慧があります。東洋医学・中医学をもっと多くの方に身近に感じてもらいたい、明るく楽しい毎日を送ってほしいと願っております。
Save Your Health for Your Future
身体と心のために
今できることを
同じカテゴリーの記事一覧






