WHO(世界保健機関)による鍼灸・漢方の認定
1979年のWHO(世界保健機関)の鍼灸適応症について
1979年のWHOの鍼灸適応症はそのまま掲載して良いものか?
鍼灸院のホームページなどを検索しますと、「「WHO(世界保健機関)が認めた鍼の適応症」というリストをしばしば見かけることが多いと思います。
これは、1976年に北京で開催された、鍼灸に関するWHO地域間セミナーのときに討論されたものが基になっています。
そしてこのリストは、鍼灸学校で使用する教科書にも載っているので、私自身もそれを鵜呑みにして、当院のホームページでも、みなさまの参考になるかと掲載をしていました。
しかし、そのリストの中には、鍼灸ではとうてい治せないであろう疾患名もあり(私の施術では治せないものといった方が適切でしょうか)、それがために閲覧した方に変な誤解や期待をさせてしまうことにもなるため、掲載することを止めた経緯があります。
また、このリストには、鍼灸がそれぞれの疾患に与える効果の程度の記載がないため、閲覧した方の中に対し、どれも同様に治ってしまうのではないかという印象を与えてしまう可能性があります。
特に難病を抱えている方は、藁にもすがる思いで治療方法を探しておりますから、過剰な期待を抱かせてしまうことになります。
そのような誤解を避けるためにも、1979年のWHOの鍼灸適応章の症の認定リストは、掲載しない方が良いという判断になりました。
1979年のWHOの鍼灸適応症の背景
1979年6月に、鍼灸に関するWHO地域間セミナーが北京で開催されました。
そこでは、鍼灸がある程度広まっている12ヶ国からの参加者が、鍼の領域の研究、臨床、トレーニング、および用語などの基準について討論したそうで、その結果、鍼が役に立つとされる疾患の暫定リストがまとめられました。
このリストの注釈には、「このリストは臨床経験にもとづくものであり、必ずしも対照群を置いた臨床試験にもとづくものではない;さらに、特定の疾患を含めたのは、鍼の有効性の範囲を示すことを意図としているのではない」とあります。
つまり、このリストに列挙されたものは、鍼の効果の裏付けが証明されたものではなく、あくまで、“効果の可能性があるかもリスト”くらいのものなのです。さらに、この北京でのセミナーで合意が得られたのは30疾患だったそうですが、その後に中国が働きかけをして、公表時には49疾患に増えたという裏話もあるようです。
WHOだけではなく、1997年には、NIH(アメリカ国立衛生研究所)も鍼灸の有効性をまとめたものを発表しておりますが、これも1979年のWHOの適応症リストと同じくらいの科学的背景しかありませんので、これもそのまま掲載することは憚れます。
2018年春にWHOが発表予定
ということで、当院ではWHOの鍼灸適応リストを掲載することを取りやめましたが、この間、2018年の春に、WHOが新たに伝統医療の効果を認定するというニュースがありました。
[blogcard url=”http://www.sankei.com/life/news/180109/lif1801090004-n1.html”]
この記事によりますと、東洋医学(伝統医学)に対する新たな認定がされそうです。
1979年に比べると、様々な知見が積み重ねられているはずなので、よりしっかりした根拠(EBM)に基づいたリストなり、効果の是非が発表されるのではないかと期待されています。
鍼灸をはじめ、漢方などを含めた東洋医学がもっともっと普及し、多くの人がその恩恵に預かれるように、内容のある発表が行われることを期待しています。
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