〖今週のひとこと養生訓〗秋分、準備してますか?|季節より少し早く、身体を秋へ

この記事の要点
イントロ | 秋の風に、身体が追いつかない
昼間に外へ出れば、まだ「秋」という言葉が似合わないほど暑い日があります。それでも、朝の風は少し涼しくなり、夕暮れはいつの間にか早くなりました。木々を見れば、まだ一面の紅葉ではないものの、どこかに季節の変化を感じることがあります。9月は、夏と秋がきれいに入れ替わる月ではありません。暑さを残しながら、その奥で秋が少しずつ進んでいく月です。だからこそ、「まだ暑いから」と夏の暮らしを続けていると、身体のほうが季節に置いていかれることがあります。もうすぐ秋分。秋になってから慌てるのではなく、そろそろ身体も秋を迎える準備を始めてみましょう。
今週のひとこと養生訓
秋分は、昼と夜が釣り合う頃
秋分は、二十四節気の一つです。太陽が秋分点を通過する日で、昼と夜の長さがほぼ同じになる頃として知られています。そこを境に、北半球では次第に夜のほうが長くなっていきます。夏至の頃にはあれほど長かった昼が、少しずつ短くなり、ついには夜と釣り合う。秋分は、暦の上の一点であると同時に、夏から続いてきた陽の勢いが静かに収まり、季節が次の段階へ進んでいくことを感じさせる節目でもあります。
秋分を迎える前から、秋は始まっている
けれども、養生で大切なのは「秋分の日になったら秋の養生を始める」と考えないことです。自然はカレンダーをめくるようには変わりません。秋分より前から朝夕の気温は下がり、日は短くなり、風の感触も変わっています。前回取り上げた「白露」では、朝露という小さな変化から秋を感じることを書きました。白露から秋分へ向かう今、その変化はさらに輪郭を増してきます。節気とは、季節を切り替えるスイッチというより、すでに起こっている自然の変化に名前をつけたもの。 そう考えると、養生も少し早めに始めるほうが自然です。
「まだ暑い」が、身体を迷わせる
この時期の難しさは、やはり暑さが残っていることです。昼間は冷房が必要なほど暑いのに、朝晩は涼しい。駅まで歩けば汗をかくのに、帰宅する頃には風が冷たい。一日の中に夏と秋が同居しています。人の身体は、その変化に合わせて体温を保ち、汗の量を変え、血流を調節しながら過ごしています。気温差が大きい日には、それだけ調節する場面も増えます。「昨日までこれで平気だったから」と真夏と同じ冷房、薄着、寝具を続けるのではなく、その日の朝、その日の夜に合わせて微調整する。秋分前の養生は、何か特別な健康法を始めることより、夏の習慣を少しずつ手放すことから始まります。
秋は「肺」の季節――喉の小さな変化に気づく
東洋医学では、秋は五行の「金」に属し、五臓では「肺」と関係する季節と考えます。ここでいう肺は、現代医学の肺という臓器だけではなく、鼻や喉、皮膚、体表など、身体と外界との接点にも関係する広い概念です。秋へ向かうと、朝起きたときに喉が少し乾く、鼻の奥が気になる、肌が真夏とは違って感じられる、といった変化が出てくることがあります。強い症状が出てから初めて季節の変化を知るのではなく、こうした小さな徴を拾っておく。原稿にある「のどケアを始めたり」というのは、まさにそのことだと思います。温かい飲み物を選ぶ、室内の乾燥を確認する、口や喉が乾いたままにしない。秋が深まる前から、少しずつ始めておきましょう。
衣服を一枚、秋へ進める
この時期、いちばん簡単にできる養生の一つが衣服の調節です。昼間の暑さだけを見て服を決めるのではなく、朝夕まで含めた一日の気温を考える。薄手の羽織ものを一枚持って出るだけでも、帰宅時の冷たい風や冷房の効いた室内に対応しやすくなります。大切なのは厚着をすることではありません。暑ければ脱ぎ、涼しくなれば羽織れるようにしておくこと。 秋分前は、「温める」よりも「調節できる」ことのほうが養生にかなっています。
秋分へ向かって、生活の時間も少し変える
変わっているのは気温だけではありません。日照時間も短くなっています。夏は明るい時間が長く、自然と活動も外へ向かいやすい季節でした。しかし秋分を過ぎれば、夜はさらに長くなっていきます。東洋医学の陰陽で眺めれば、夏至を頂点として陽は少しずつ退き、陰が増していく時期です。だからといって急に活動を控える必要はありません。ただ、真夏の勢いのまま夜更かしを続けるのではなく、少し早く休む。夏に使った身体を回復させながら、これから深まる秋へ生活のリズムも移していく。これも秋分を迎える準備です。
秋の準備とは、秋を先取りすることではない
ここで間違えたくないのは、秋の準備とは、まだ暑いのに身体を無理に温めたり、冬のような暮らしを始めたりすることではないという点です。残暑が厳しい日には、まだ熱を逃がす必要があります。一方、朝晩には冷えが入ってくる。つまり、この時期には「夏だから」「秋だから」と一つに決めつけないほうがいい。今日の身体と、今日の空気を見る。 暑ければ暑さに応じ、涼しくなれば涼しさに応じる。その変化の少し先を見ながら準備しておく。それが季節に合わせるということです。
そして、この先には秋特有の「燥」が次第にはっきりしてきます。秋の乾燥にも、夏の熱を残した「温燥」と、秋が深まって冷えを帯びた「涼燥」があります。この違いについては、別の記事でじっくり取り上げます。
まとめ|季節より、ほんの半歩先へ
秋分はまだ少し先です。それでも朝の風も、夕暮れの早さも、木々の様子も、すでに秋の準備を始めています。人の身体だけが、真夏のままでいる必要はありません。衣服を一枚用意する。冷房や寝具を見直す。喉の乾きに気づく。少し早く眠る。どれも小さなことですが、その小さな変化を季節よりほんの半歩早く始めておけば、秋が深まったときに身体は慌てずにすみます。養生とは、不調になってから何かを足すことだけではありません。これから来る季節を知り、迎える支度をしておくことも養生です。 秋分を前に、暮らしの中にも一つ、秋の準備を始めてみてください。
秋分を迎えてから、秋の身体をつくるのではありません。朝夕の涼しさ、日の短さ、喉や肌の変化を感じたら、もう準備の始めどき。季節よりほんの半歩先を歩くことが、季節の変わり目の養生です。
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私たちの体と心はいちばんの宝ものです。
長い人生の旅路をともにする心身を、整え過ごすために、体と心にやさしい鍼灸をお奨めします。

FAQ よくある質問とその答え
秋分とはいつ頃ですか?
まだ暑いのに、秋の養生を始めてもよいのでしょうか?
秋分前には、具体的に何を変えればよいですか?
東洋医学では、なぜ秋に肺を養うのですか?
「温燥」と「涼燥」は何が違うのですか?
秋の不調におすすめの漢方薬はありますか?
For English Readers
Are You Ready for the Autumn Equinox?
In Japan, the Autumn Equinox (Shūbun) arrives around September 22–23. By then, day and night are nearly equal in length, and the nights gradually become longer as autumn deepens.
But seasonal change does not begin on the equinox itself.
Even while daytime temperatures remain surprisingly hot, mornings and evenings may already feel cooler. Sunset comes earlier, the wind begins to change, and the body has to adapt repeatedly to temperature differences throughout the day.
Traditional East Asian medicine associates autumn with the Lung system and with dryness. In this traditional framework, the Lung is connected not only with breathing but also with the nose, throat, skin and the body’s interaction with the outside environment.
Preparing for autumn does not mean pretending that summer is already over. On a hot afternoon, we still need to respond appropriately to the heat. But we can also begin adjusting clothing, air conditioning, bedding and sleep habits as mornings and nights become cooler.
This is one of the central ideas of seasonal self-care: do not wait until the season has completely changed before changing your daily life.
Notice what is already happening around you—and let your body move with it.
Seasonal wellness means staying half a step ahead of the changing season.
【おすすめの漢方薬】
この季節におすすめの漢方薬・漢方レメディ
季節の変わり目になると毎年体調を崩す、喉や鼻の不調を繰り返す、夏の疲れがなかなか抜けない――そのような場合は、症状だけでなく身体全体を一度見直してみることをおすすめします。薬戸金堂では、体質や季節、生活の様子などをうかがいながら、その方に合った漢方薬・漢方レメディをご提案しています。処方名だけをお伝えする簡易的な相談ではなく、身体をきちんと見たうえで一緒に考えていきます。
※ インスタグラムやX、noteなどを見ていますと、「〇〇のときは〇〇湯」などと一覧で明示しているものがございますが、これらはあくまで参考程度にしておくとよいでしょう。自己判断はかえって治療の時期を逸してしまうことがありますので、しかるべきところでご相談してみてください。
漢方薬は、個々の体質に合わせた処方が大事になります。
当院をはじめ、漢方薬に詳しい漢方薬重視の薬局・薬店・ドラッグストアでのご相談をお勧めいたします。また、漢方薬は、変化する体質や時期によって変えていくこともありますので、定期的な受診をお勧めいたします。
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源保堂鍼灸院・院長
瀬戸郁保 Ikuyasu Seto
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
東洋遊人会・会長/日本中医会・会長/東洋脉診の会・会長
東洋医学・中医学にはよりよく生活するための多くの智慧があります。東洋医学・中医学をもっと多くの方に身近に感じてもらいたい、明るく楽しい毎日を送ってほしいと願っております。




