〖今週のひとこと養生訓〗秋バテで秋カゼ!?|夏の疲れを残さず、秋の「肺」と衛気を養う

この記事の要点
イントロ | 秋の風に、身体が追いつかない
九月になりました。昼間はまだ夏の名残を引きずっているのに、朝、家を出たときの空気には、ほんの少し違うものが混じっています。風が軽くなり、日が落ちるのも早くなりました。自然はもう、次の季節へ歩き始めています。ところが、人の身体はそれほど器用ではありません。ひと夏を暑さの中で過ごし、汗をかき、眠れない夜を重ね、冷房と外気を行き来してきた身体には、それなりの疲れが残っています。そこへ朝夕の涼しさが入ってくる。すると、それまでどうにか持ちこたえていたものが、ふっと崩れることがあります。「秋になったら風邪をひいた」。けれど、その風邪の始まりは、案外、夏の中にあったのかもしれません。
今週のひとこと養生訓
秋バテは、夏から届いた置き土産
秋バテというと、秋の気候によって起こる疲れのように聞こえます。しかし身体の時間は、暦のように月が替われば帳消しになるものではありません。真夏の暑さの中では、身体は熱を逃がし、汗を出し、体温を保とうと働き続けています。食欲が落ちた日もあったでしょう。暑くてよく眠れなかった夜もあったでしょう。冷たい飲み物や食べ物が増え、胃腸に負担をかけた人もいるかもしれません。その一つひとつは小さくても、ひと夏を通して重なれば身体に残ります。暑さが少し退いた頃になって、急に疲れを感じる。朝起きられない。食欲が戻らない。身体が重い。これが秋バテの一つの姿です。源保堂では2021年にも秋バテを取り上げましたが、そこでも夏から秋への移行期に身体が追いつかなくなることを指摘しています。
秋は「肺」が主る季節
東洋医学では、秋は「肺」と関係の深い季節です。ただし、ここでいう肺は現代医学でいう肺臓だけではありません。呼吸を通じて外界の気を取り込み、全身へ気を巡らせ、さらに皮膚や体表の状態にも関わる、より広い働きを含んでいます。秋になって空気が変われば、鼻や喉、皮膚など、外界と身体との境目にも変化が現れます。乾燥して喉が気になる、鼻が敏感になる、肌が乾いてくる。こうした「境目」の変化に目を向けることが、秋の養生では大切になります。
身体の門番、「衛気」を養う
東洋医学には「衛気(えき)」という考え方があります。「衛」とは守ること。衛気は身体の表面を巡り、外から入ろうとする邪気に対して、いわば身体の門番のような役割を果たすと考えられてきました。そして肺は、この衛気と深く関係しています。ここで面白いのは、東洋医学が風邪を「外から悪いものが入ってきた」という一方向だけでは見ていないことです。同じ風に当たり、同じ場所で過ごしていても、風邪をひく人もいれば、ひかない人もいる。外邪の強さだけでなく、それを迎える側の身体の状態も見るわけです。夏の疲れを抱え、気が消耗しているところへ秋の風が入る。そのとき身体の守りが十分でなければ、外邪につけ入る隙を与える。だから秋風邪を考えるときには、外ばかり警戒するのではなく、まず内側を整えることが大切になります。
「風邪をひかない身体」は、一晩ではつくれない
風邪の季節になると、「免疫力を上げる食べ物はありますか」と聞きたくなるものです。しかし、身体は何か一つを食べれば翌朝から強くなるほど単純ではありません。食べ、眠り、動き、休み、また食べる。その当たり前の営みの積み重ねによって、身体は保たれています。とくに夏に食欲が落ちていた人は、秋になって食欲が戻ってきたら、食事を立て直すよい機会です。温かい汁物、穀類、野菜、魚や肉、豆類などを、その人の体調に合わせて食卓へ戻していく。派手さはありませんが、秋の身体をつくるのは、こうした毎日の食事です。
まず眠る――夏の借金を秋まで持ち越さない
もう一つ、秋口に見直したいのが睡眠です。夏は日が長く、暑さもあって、どうしても生活時間が後ろへずれやすくなります。しかし秋になれば、日は少しずつ短くなります。自然界の陽気も、盛夏のように外へ外へと広がるばかりではありません。夏の勢いのまま夜更かしを続けるのではなく、少し早く休む。その日の疲れを、その日のうちに身体へ返してやるような気持ちで眠る。秋の養生は、何かを始めることより、夏から続けてきたものを一つ終わらせるところから始まることもあります。
秋風邪は、喉から始まることもある
秋になると空気は次第に乾いてきます。東洋医学ではこれを「燥」といい、肺は燥を嫌うとされます。まだ九月の初めは湿度の高い日もありますが、季節は少しずつ乾燥する方向へ進みます。朝起きたときに喉が乾く、鼻の奥が少し気になる――そんな小さな変化は、身体が季節を感じ取っている徴かもしれません。先週の「寝冷え」のように、冷房や朝夕の冷えも重なります。源保堂の「寝冷えしていませんか?」では、残暑の夜に真夏と同じ冷房や寝具を続けることで身体を冷やしすぎる可能性を取り上げています。
秋風邪を防ぐためにも、喉だけを見るのではなく、眠り、食事、室温、衣服まで含めて暮らし全体を少しずつ秋仕様へ移していきましょう。
まとめ|秋風邪を防ぐなら、夏の終わらせ方から
秋になって風邪をひいたとき、私たちはつい「急に涼しくなったから」と考えます。それも一つの理由でしょう。しかし、身体をもう少し長い時間で眺めてみると、その前にはひと夏があります。暑さの中で何を食べ、どれほど眠り、どれほど疲れを残してきたか。その積み重ねの先に、九月の身体があります。秋の風だけを恐れる必要はありません。風が変わったなら、こちらも変わればいい。少し早く眠る。きちんと食べる。冷房や衣服を朝夕の気温に合わせる。そうして夏の疲れを一つずつ片づけていくうちに、身体も秋へ追いついてきます。秋の養生とは、風邪を恐れて身を縮めることではなく、次の季節を受け止められる身体をつくることなのです。
秋風邪は、秋だけの問題とは限りません。夏に使った力をきちんと回復させ、食べ、眠り、肺と衛気を養う。秋の風に負けない身体は、夏の疲れを秋へ持ち越さないところから始まります。
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FAQ
「秋バテ」とは何ですか?
東洋医学では、なぜ秋と風邪を「肺」と結びつけるのですか?
「衛気」は現代医学の免疫力と同じものですか?
秋風邪を防ぐために、まず何をすればよいでしょう?
For English Readers
Autumn Fatigue and Seasonal Colds: Recovering from Summer Before Autumn Begins
Early autumn in Japan can be deceptive. The afternoons may still feel like summer, while mornings and evenings become noticeably cooler. Our bodies, however, do not change seasons as quickly as the calendar does.
After weeks of heat, sweating, restless sleep, reduced appetite and constant movement between air-conditioned rooms and hot outdoor temperatures, fatigue may remain even after the worst heat has passed. This transitional exhaustion is commonly called aki-bate, or “autumn fatigue,” in Japan.
Traditional East Asian medicine associates autumn with the Lung system. In this context, the Lung means more than the anatomical lungs; it is also traditionally connected with respiration, the nose, throat, skin and the body’s interaction with the outside environment.
Another traditional concept is Wei Qi, often described as protective qi circulating near the body’s surface. It should not be equated directly with the modern medical concept of immunity, but historically it has been used to explain the body’s ability to defend itself against external influences.
The practical lesson is simple: do not enter autumn while still living exactly as you did in midsummer. Restore regular meals, get enough sleep, reconsider nighttime air conditioning and clothing, and pay attention to the changing morning and evening temperatures.
Autumn wellness begins by properly finishing summer.
【おすすめの漢方薬】
この季節におすすめの漢方薬・漢方レメディ
漢方では、「秋バテ」「風邪」という名前だけで処方を決めるのではなく、その人の気血の状態、冷えや熱、発汗、胃腸の働き、喉や鼻の状態などを見ながら考えます。同じ「風邪をひきやすい」という訴えでも、身体の状態は人によって異なります。季節の変わり目に不調を繰り返す方は、自己判断で処方を選び続けるのではなく、ご自身の体質を一度きちんと見てもらうことをおすすめします。
※ インスタグラムやX、noteなどを見ていますと、「〇〇のときは〇〇湯」などと一覧で明示しているものがございますが、これらはあくまで参考程度にしておくとよいでしょう。自己判断はかえって治療の時期を逸してしまうことがありますので、しかるべきところでご相談してみてください。
漢方薬は、個々の体質に合わせた処方が大事になります。
当院をはじめ、漢方薬に詳しい漢方薬重視の薬局・薬店・ドラッグストアでのご相談をお勧めいたします。また、漢方薬は、変化する体質や時期によって変えていくこともありますので、定期的な受診をお勧めいたします。
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源保堂鍼灸院・院長
瀬戸郁保 Ikuyasu Seto
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
東洋遊人会・会長/日本中医会・会長/東洋脉診の会・会長
東洋医学・中医学にはよりよく生活するための多くの智慧があります。東洋医学・中医学をもっと多くの方に身近に感じてもらいたい、明るく楽しい毎日を送ってほしいと願っております。





