〖今週のひとこと養生訓〗寝冷えしていませんか?|残暑の夜に気をつけたい夏の冷え

この記事の要点
イントロ | 夜の空気が、少し変わってきました
残暑お見舞い申し上げます。
昼間は相変わらず厳しい暑さが続いていますね。
外へ出れば真夏とほとんど変わらず、「秋の気配」などと言われても首をかしげたくなる日もあります。それでも、お盆を過ぎた頃から、夜更けや明け方の空気にはほんの少し違うものが混じり始めます。空に浮かぶ雲も、真夏よりも少し高いところにあるように思います。
季節というものは、ある朝突然、夏から秋へ切り替わるわけではありません。
日の傾きが変わり、風が変わり、夜が少しずつ長くなり、その小さな変化を重ねながら次の季節へ向かいます。
ところが私たちの暮らしは、ともすると昨日までと同じ設定のままです。
冷房も、寝具も、着るものも、すべて真夏のまま。
その小さな行き違いが起こりやすいのが、今の時季となります。
今週のひとこと養生訓
「まだ暑い」という感覚が、寝冷えを招く
寝冷えというと、秋口や冬の話のように聞こえるかもしれません。
しかし、実際には夏にも起こります。
『ひとこと養生訓』のコアな読者に向けて、もう少し正確言いますと、寝冷えは“立秋以降”に起きます。
冷房を使い、薄着で眠る夏だからこそ、身体を冷やしてしまう条件がそろっているともいえます。眠りにつく頃には蒸し暑く、冷房を強めにして布団もほとんど掛けない。ところが夜が深まり、外気温が下がってくると、眠り始めたときにはちょうどよかった環境が、明け方には冷えすぎているということになります。
そしてここに“立秋過ぎ”という条件が重なると、途端に寝冷えをしやすくなります。
暦とは不思議なもので、暦の境とともに気象条件は着実に変わります。そしてその変化は、私たちの意識に上らなくても、その変化を受け止めているものです。
今回のテーマである“寝冷え”についても、立秋以前はどんなにお腹を出していてもほとんど寝冷えは起きないのですが、それ以後は同じ状況で寝冷えになってしまうのです。
ここで重要なのは、「冷房は身体に悪い」と決めつけることではありません。
残暑の夜にも冷房は必須です。寝冷えを避けるために冷房を切りましょうという短絡的なことではありません。
「季節が動けば、同じ温度設定がいつまでも同じように身体に合うとは限らない」ということが今回のテーマの本質になります。
東洋医学では、季節と身体を切り離さない
東洋医学では、人の身体と季節を切り離して考えません。
私たちの体は自然の賜物であり、自然の一部でありますから、単純に考えてもみなさまもそれは実感されていると思います。
暑い時季には暑い時季の身体があり、寒い時季には寒い時季の身体があります。
そして夏から秋へ移る頃には、その間を渡っている身体があります。お盆を過ぎても、日中には夏の暑さが残っています。一方で、自然界の陽気は盛夏の頂から少しずつ退き始めます。この時季に必要なのは、急いで秋の生活へ切り替えることでも、真夏の暮らしをそのまま押し通すことでもありません。
外の変化を感じながら、一枚の掛け物、冷房の設定、眠るときの服装などを少しずつ動かしていく。養生とは、こうした小さな加減の中にもあります。
身体は「冷えました」と言葉では教えてくれない
- 朝起きたとき、のどに違和感がある
- お腹の調子がいつもと違う
- 腰まわりが妙に冷えている
- 身体がこわばっている
こうした変化があったとき、私たちはつい「疲れたのかな」「年齢のせいかな」と考えてしまいます。しかし、その前に昨夜の過ごし方を振り返ってみるのも一つです。
冷房が身体へ直接当たっていなかったか。お腹を出したまま眠っていなかったか。寝る前まで冷たいものを続けていなかったか。身体は必ずしも「私は冷えています」と分かりやすく訴えるわけではありません。ちょっとした不調の背景に、毎晩繰り返している生活習慣が隠れていることがあります。
冷房を切るのではなく、冷やし方を整える
寝冷えを避けるために、暑い夜まで冷房を我慢する必要はありません。
寝苦しさで睡眠そのものを損なってしまえば、それも身体への負担になります。睡眠不足は免疫力も下がりますので、そこを削ることは避けたいです。
見直したいのは「使うか、使わないか」ではなく「どう使うか」です。
例えば風が身体へ直接当たり続けないようにする、ということも養生の一つになります。寝具を何も掛けずに眠るのではなく、薄い掛け物を手の届くところに置く、というのも大切なことです。
立秋を過ぎたここからは、もう夏から秋への切り替えの養生が必要となります。
そこで、とくにお腹や腰まわりを冷やしたままにしない、寝る前に部屋を冷やしておき、その日の気温や住環境に合わせて設定を調節するなどなど。
真夏には快適だった方法を固定せず、今夜の空気に合わせて少し変えてみる。その程度の細やかさが、この時季には案外よく働きます。
夏の冷えは、外からだけではありません
この時季にもう一つ忘れたくないのが、口から入る冷えです。
暑い日が続けば、冷たい水、お茶、アイス、ビール、冷たい麺などが自然と増えます。それ自体をすべて避ける必要はありません。しかし、真夏のように体の外側は冷房で冷やし、内側からも冷たいものを重ねるような生活が毎日続けば、胃腸の働きに負担を感じるようになります。普段胃腸が強い人でもなりますから、弱い方は尚更ですね。
お盆を過ぎても昼間は暑いので、夏の食事を突然温かいものばかりに変える必要はありません。ただ、朝の一杯を常温にしてみる、温かい汁物を一品戻してみる、夜遅くの冷たい飲食物を少し控えてみる。
季節の移り変わりに合わせ、食卓も一足ずつ次へ進めていけばよいのです。
「季節についていく」という養生
現代の暮らしでは、室温を一年中かなり自由に調節できます。
これは、便利になった一方で、外の季節を身体で感じる機会が少なくなったということでもあります。一年を通して、自然は一つのサイクルを休みなく続けています。この時季の変化でいえば、太陽の高さは変わり、日暮れは早くなり、夜の長さは少しずつ増えていきます。それにつれて、鳴いているセミの種類が変わったり、夜になると秋の虫の鳴き声が聞こえてきたりもしますよね。
自然はもう次の季節へ歩き始めています。
養生とは、その歩みに自分の身体を静かに合わせていくことでもあります。まだ暑ければ、きちんと涼しくする。都会にいても、田舎にいても、身近なところにある自然に耳を傾けてみれば感じるはずです。その声を聞けば、真夏と同じ冷やし方に違和感を感じるのではないでしょうか。その違和感が、養生のきっかけです。
大きなことを始める必要はありません。「昨日と同じでいいのかな」と身体に尋ねてみる。その小さな問いが、季節の変わり目には大切です。
まとめ|夏の終わりは、冷えに気づく頃
お盆を過ぎても、夏はまだ終わっていません。
しかし、盛夏とまったく同じ夏でもありません。
“残暑お見舞い申し上げます”という時効の挨拶は、奥が深いですね。
同じ夏でも、暑さに濃淡があることを示し、つつがなきやと同胞を思いやる心はとても素晴らしい習慣ではないかと思います。
昼には暑さが残り、夜には次の季節がわずかに近づいてくる。
この二つが同居する時季だからこそ、寝冷えが起こりやすくなります。冷房を恐れてくださいとお伝えしているのではありません。冷たいものをすべて遠ざける必要もありません。
ただ、真夏につくった習慣をそのまま続けるのではなく、その日の空気と自分の身体を見ながら加減を変えていくこと。暑さの濃淡を感じながら、日々の生活をそこに合わせていけたら、より過ごしやすい毎日になります。
季節は静かに動いています。
身体の暮らし方も、それに合わせて少しずつ動かしていきましょう。
「まだ夏だから」ではなく、「夏も少しずつ変わっている」と考える。残暑には暑さへ対策を続けながら、夜間や明け方の冷えにも目を向けます。冷房、寝具、衣服、冷たい飲食物を一度に変える必要はありません。身体の小さな変化を手がかりに、その日の季節に合った加減へ整えていくことが、夏から秋へ身体を渡していく養生になります。
心身のメンテナンス
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想生・想身・想心
私たちの体と心はいちばんの宝ものです。
長い人生の旅路をともにする心身を、整え過ごすために、体と心にやさしい鍼灸をお奨めします。

FAQ
寝冷えとは、単に身体が冷えることですか?
寝冷えを防ぐなら、夜はクーラーを切ったほうがよいですか?
お腹や腰を冷やさないほうがよいのはなぜですか?
冷たい飲み物や食べ物も控えるべきですか?
夏から秋への養生は、いつ頃から始めればよいですか?
For English Readers
Are You Getting Chilled While You Sleep? Late-Summer Care in Japan
Even after Obon in mid-August, Japan remains hot and humid. Yet the season has begun to change quietly. Days are still intensely hot, while nights and early mornings may gradually feel different from the peak of summer.
This is a time when “nebie” (寝冷え) — becoming overly chilled while sleeping — can occur. Air conditioning that felt comfortable at bedtime may feel too cold several hours later, especially when combined with light clothing and little bedding.
The answer is not simply to stop using air conditioning. Hot and humid nights can make sleep difficult and may increase the risk of heat-related illness. Instead, pay attention to how you use it: avoid having cold air blow directly onto your body, adjust the temperature as conditions change, and keep a light blanket nearby.
From the perspective of East Asian medicine, the human body is not separate from the seasons. As summer slowly moves toward autumn, our daily habits should also begin to change little by little. This includes not only room temperature and bedding, but also what we eat and drink. If you have been consuming large amounts of very cold foods and drinks throughout the summer, late summer may be a good time to reconsider the balance.
Seasonal care does not mean following the calendar mechanically. It means noticing what is changing outside — and what is changing within your own body.
Summer has not disappeared, but it is no longer standing still. Our way of caring for the body should move with it.
【おすすめの漢方薬】
この季節におすすめの漢方薬・漢方レメディ
寝冷えのあとに現れる不調は、人によって違います。
のどに出る人、お腹に出る人、身体のこわばりとして感じる人など、その現れ方だけを見ても一様ではありません。漢方では「冷えた」という一語だけで処方を決めるのではなく、その人がもともと冷えやすいのか、暑さで消耗しているのか、胃腸の状態はどうか、発汗や食欲、睡眠はどうかといった全体を見ながら考えていきます。
そのため、この連載では「寝冷えには○○」という形で具体的な処方名を並べることはしていません。市販薬を症状名だけで選び続けるより、同じ不調を繰り返す方は、一度きちんと身体の状態を診てもらうことをおすすめします。
※ インスタグラムやX、noteなどを見ていますと、「〇〇のときは〇〇湯」などと一覧で明示しているものがございますが、これらはあくまで参考程度にしておくとよいでしょう。自己判断はかえって治療の時期を逸してしまうことがありますので、しかるべきところでご相談してみてください。
漢方薬は、個々の体質に合わせた処方が大事になります。
当院をはじめ、漢方薬に詳しい漢方薬重視の薬局・薬店・ドラッグストアでのご相談をお勧めいたします。また、漢方薬は、変化する体質や時期によって変えていくこともありますので、定期的な受診をお勧めいたします。
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源保堂鍼灸院・院長
瀬戸郁保 Ikuyasu Seto
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
東洋遊人会・会長/日本中医会・会長/東洋脉診の会・会長
東洋医学・中医学にはよりよく生活するための多くの智慧があります。東洋医学・中医学をもっと多くの方に身近に感じてもらいたい、明るく楽しい毎日を送ってほしいと願っております。






