恩師
恩師が鍼灸を受けにきてくれる
今日は大学時代の恩師が治療受けに来てくれた。
昨年開業したてのとき、買いそびれたものを気がついては備品の調達をしに渋谷と表参道の往復をしていたときだった。学校の前を歩いていたとき、恩師と偶然すれ違った。
「瀬戸ちゃん、何やってるの~。」
「え、いやぁ、実はこのあたりで鍼灸院を開業したんですよー」
「ええっ!そうなのぁ。じゃあ今度行くよ。」と、こんな感じの会話をしてそのときは別れた。後日治療院のパンフレットを恩師宅に送り、来院を待ちわびていた。
しかしその約束はなかなか果たされることなく、来院は突然今日のこの日となった。今日は入試の試験監督をしに学校に来たそうで、その帰りに寄ってくれた。
「いやいや、ごめんごめん。なかなか来れなくて・・・。学校に来たときに寄ろうと思っていたんだけど、会議が入ったりなかなかね・・・。でも、瀬戸ちゃん、きれいなところじゃない。いやいや、いいねぇ。」玄関を入って最初の挨拶はこんな感じだった。
「先生、水臭いじゃない。待ってたんですよ、ずっとさあ。」
「いやいや。鍼怖くてさ・・・・。どうなの、痛い?」
「痛くないってあれほど言ったじゃないですか~。嫌だなぁ。じゃあ先生、早速カルテに記入してください・・。」と、教え子と言う立場は脇において治療者としての仕事が始まる。
この恩師は大学の先生ではあるが、本業は彫刻家。だからなのか、当時から他の教授とはどこか違っていた。そして大学の先生としてはかなり若い方だった。
恩師の作品は大きな石で作られることが多い。石と格闘しているのだ。そのため私が始めてあったときから腰が痛いとよくこぼしていた。 ベッドサイドで恩師に鍼の説明をする。そして治療が始まる。いつもの通り証(東洋医学の治療方針)を立て、おもむろに鍼をする。的確な治療を施し、次のツボへ。そして、うつ伏せになってもらう。
「あれ?もう刺したの?え?刺さってないの?」
「もう刺してますよ、先生。ぜんぜん痛くないでしょ?」
「そうだね、なんか不思議なもんだね・・・。」と、20分ばかりの治療が終了。そしてお茶を出し、当時のこと、卒業後のこと、鍼灸師になってからのことなどを短い間ではいろいろと話が飛んだ。
「今日は治療してくれてありがとう。いやー、不思議だね鍼って。なんだか身体が温かくなって、軽くなったよ。また来るよ。」
大学を卒業して10数年経つが、こういう形でまた再会できてとても嬉しかった。
大学時代、恩師の家に遊びに行ったときに小学生のお子さんが3人いたが、その一番上はもう大学を卒業して仕事をしているという。そして一番下の娘さんは看護学校を目指しているという。
恩師のお子さんの話を聞き、恩師と私の間には長い月日が通過していったことを実感したが、今日こうして再会してみても、その時間の隔たりはちっとも感じなかった。
「先生、また来てくださいね!学生にも紹介してくださいよ!」
「うん、わかった。瀬戸ちゃんもがんばれよ。また来るから!」と、手を挙げて微笑みながら恩師は帰っていった。

源保堂鍼灸院・院長
瀬戸郁保 Ikuyasu Seto
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
東洋医学・中医学にはよりよく生活するための多くの智慧があります。東洋医学・中医学をもっと多くの方に身近に感じてもらいたい、明るく楽しい毎日を送ってほしいと願っております。
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