『黄帝内経』
『黄帝内経』について
『黄帝内経』の概要
『黄帝内経』は、現存する医学書の中では最も古い文献の一つであり、班固の著した『漢書・芸文志』のなかに記載がある。東洋医学・中医学の原典中の原典であり、基礎理論の土台になっている。
『黄帝内経』は『素問』と『霊枢』に分かれるが、全18巻、162編で成り立っている。『黄帝内経』は、病理、解剖、病症などが書かれた臨床編ともいえる『素問』と、より理論的なものが書かれた『霊枢』の二つに分かれる。
『黄帝内経・素問』にある記述
「風邪は万病のもと」「風は百病のもと」ということわざがあります。
一般的には、“風邪を引いてしまうと発熱や咳、頭痛などさまざまな症状が出てくるので厄介である、さらにこじらせるともっとたいへんである”といったニュアンスで使われるのではないでしょうか。
実はこのことわざのルーツを辿っていくと、東洋医学・中医学の原典である『黄帝内経・素問』に行き着くと考えられています。この『黄帝内経・素問』のなかでは、「風は百病の始め」「風は百病の長」といった表現になっているのですが、ニュアンス的には、私たちが使っていることわざと同じように、“風邪があらゆる病気の始まりであり、元になっている”といったことを言っています。
風邪ではなく、風
しかし、よくよく見ていると、この記述は「風」であって「風邪」ではありません。また、東洋医学・中医学では、風邪を“かぜ”とは読まず、“ふうじゃ”と読みます。
というと・・・
これはいわゆる“カゼ”ではなく、“ふうじゃ”と呼んだ方のがより適切であるとも考えられます。東洋医学・中医学の原典である『黄帝内経』は、今から2000年以上前に書かれた書物で、しかも後代に入っていろいろに手が加えられたり散逸したりしてますので、行間を読み解く必要があります。そのため、解釈も広がっていくことが多く、これもその一つとなります。
そこで、“ふうじゃ”とした場合は、これは“風によって起きる病”という解釈になります。風というのはそよ風のように心地よいものであれば私たちの心身を癒してくれますが、寒い隙間風、吹雪のような嵐、熱風など、心身を痛めつけるものもあり、そういった過剰になって心身を攻撃する風のことを“ふうじゃ”と言ったわけです。
さらに、風というのは一年中吹いています。
なので、季節に限らず常にあるものなので、各季節の邪気と繋がりやすい傾向にあります。たとえば、冬は寒いので寒邪という寒さが人体に影響を与えるのですが、これと風邪がくっつくと、「風寒」となります。
以上のように、風は一年中吹き、そして他の邪気ともくっつきやすく、場合によっては風が先導して他の邪気を連れてくることもありますので、そう言った点からも、「風は百病のもと」とも言われてきました。
風邪対策をしていきましょう
以上、風邪、風・・・というキーワードで「風邪は万病のもと」を考察してまいりましたが、現代医学的に考えてみても、例えば糖尿病は風邪によって悪化することもありますので、そう言った意味では万病の元になるので要注意です。
さらに、早い人では年明け頃から花粉を感じる人がおりますが、この時期に風邪をひくと花粉症が誘発されたりすることもあります。これは、花粉症も免疫システムの誤作動で起きているわけですから、そこにウイルスによる感染症が加わればさらに大変なことになることは想像できると思います。これは逆も真なりで、花粉症になることによって風邪に変わってしまうこともありますので、この時期は両方の対策をしていく必要があります。これもまた「風邪は万病のもと」の一面であります。
もう一つ付け加えるならば、昨年は酷暑が長引き、心肺機能が疲れている方が多いので、一度風邪をひいてしまうと咳や喉の痛みなどが長引く傾向にあります。通常であれば、4〜7日もあれば治っていく風邪ですが、今冬は咳が治らないとか、喉のイガイガが取れないとか、風邪の後遺症が根深く残っている方が多く、そのために寝不足になったり、食事が取れなかったりといった二次的な不調につながっていて、そう言った面からみると、まさに今冬は「風邪は万病のもと」のことわざが身にしてみている人も多いのではないでしょうか。
古来より、東洋医学・中医学は風邪の変化を深く考察してきた医学体系でもあります。風邪の初期から終わり、さらにこじらせてしまった時の後遺症まで、幅広く対応する手段があります。風邪から移行してしまった咳喘息、喉の不調などが続いている場合は、東洋医学・中医学に詳しいところで受診することをお勧めいたします。
源保堂鍼灸院・院長
瀬戸郁保 Ikuyasu Seto
鍼灸師・登録販売者・国際中医師
東洋医学・中医学にはよりよく生活するための多くの智慧があります。東洋医学・中医学をもっと多くの方に身近に感じてもらいたい、明るく楽しい毎日を送ってほしいと願っております。
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