〖今週のひとこと養生訓〗トキメキを呼び醒まそう!|秋の五感から心と身体を動かす養生

この記事の要点
イントロ|最近、トキメいていますか?
秋になると、少し立ち止まりたくなりませんか?
食べ物がおいしくなり、空の色が変わり、風の匂いも夏とは違う。虫の声が聞こえたり、夕暮れが妙にきれいだったり。暑さに追われていた夏には見えていなかったものが、ふっと目に入ってくることがあります。
そんなとき、「あ、いいな」と思う。
その瞬間を、今週は少し大事にしてみませんか?
そうすると、いつもの生活もまんざら捨てたものじゃなかったんだなって、この日々が愛おしくなったりします。
養生というと、冷えないようにするとか、早く寝るとか、身体を守る話が多くなります。伝えている私たちも、なんだか説教じみて心苦しくなったりもします・・・。それはそれで必要なのことですから、伝えなくてはという使命感も相まってしまうわけです。
でも、人間は守っているだけでは元気にならないこともありますよね。
心が動く。
何かを面白いと思う。
ちょっと出かけたくなる。
秋は、そんな「トキメキ」をもう一度呼び醒ますのに、いい季節です。
今週のひとこと養生訓
秋は、五感がよく働く季節
秋は不思議な季節だなと感じることがあります。
栗や柿、きのこ、新米。食べ物から秋を感じることもあれば、金木犀の香りがどこからともなく薫ってきたりします。そして空が高く見えたり、風が乾いていたり、遠くから虫の声が聞こえたりします。
春も変化が多い時ですが、秋も秋で、変化が多いことにふとした瞬間に気づくことが多くあります。
ひとつひとつは、私たちの目には大したことでないように見えますが、自然界にとっては、これから寒さに備えようとする大きな変化なのかもしれません。そして自然界の植物や動物は、この変化を敏感に感じ取っているからこそ、変化し、変化することを受け入れているのでしょう。
私たちには、“五感”というものが備わっています。
街で暮らしていると、この五感は過剰な刺激を受け続けているので、常に疲弊し、自然界の移ろいを感じることができなくなっているところもあるのではないでしょうか。
自然界が変化をしていくこの時期に、自然界は春とはまた一味違う様相を見せてくれています。
そこで、私たちに備わっている五感を、やさしく使ってみてはいかがでしょうか。
季節を感じるというのは、カレンダーの日付を確認することではなく、身体で「ああ、秋だな」と分かることなのだと思います。
東洋医学では、秋は「肺」の季節
東洋医学では、秋は五行の「金」に属し、五臓では「肺」と結びつきます。
ここでいう肺は、現代医学の肺臓だけではありません。
呼吸、鼻、皮膚、体表など、外の世界と身体が触れ合うところまで含めて考えます。
空気を吸い、匂いを感じ、風が肌に触れる。
そう考えると、東洋医学を産んだ古代の人々が、「秋を感じる」ということと肺の季節が重なるとしたのもよくわかるような気もしますし、、東洋医学が少し面白く、そして身近に感じるのではないでしょうか。
東洋医学は、季節と身体の働きを大きなつながりとして見てきた。
その中で、秋と肺が結びつけられていると考えてみてください。
トキメキは、忘れていた感覚を起こしてくれる
大人になると、「好きだからやる」だけでは動けないことが増えます。
仕事だから。予定があるから。効率がいいから。役に立つから。
そういう判断ばかりになりやすい。
でも、
本屋で思わず手に取った一冊、
久しぶりに聴いた音楽、
道端に咲いていた花、
食べた瞬間に「うまい」と思ったもの。
理由はよく分からないけれど、心が一瞬動くことがあります。
生命が躍動する瞬間です。
それは「トキメキ」です。
大げさな感動でなくてもいい。
「ちょっといいな」で十分です。
その瞬間、いつもとは違うところに意識が向きます。
眠っていた感覚が、少しだけ起きる。
それこそが「トキメキ」の力です。
それだけでも人は変わります。
旅行や芸術鑑賞じゃなくてもいい
「感性を磨こう」なんて言われると、途端に面倒になります。
美術館へ行かなければいけないとか、旅行をしなければいけないとか、SNSを見ていると煽られますね。
でも、実際に行ったら人が多くてそれどころではなかったなんてお話も聞きます。
秋のトキメキのためだからと、なにも別に特別なことをしなくてもいいのではないでしょうか?
過剰に煽られて、五感を無理やり起こすなんて、それは無理をしているだけで、また過剰に五感を使うだけになります。
それよりも、スーパーに並んだ秋刀魚を見て季節を感じてもいい。
朝の空気が冷たくなったことに気づいてもいい。
コンビニへ行く途中の空が妙にきれいだった、それでもいい。
いつもの道を一本変えて歩くだけでも、見える景色は変わります。
養生というのは、特別なことを追加するより、普段なら通り過ぎてしまうものを一つ拾うことなのかもしれません。
そんなことを秋は教えてくれています。
「心を動かす」ことも養生になる
身体を整えることと、心が動くことは別々のようで、実際には切り離しにくいものです。
いえ、東洋医学の考えに則れば、体も心も同体です。
体と心がお互いに備わってこその、“わたし”なのです。
気持ちが沈んでいると身体まで重く感じることがありますし、逆に外へ出て気持ちのいい風に当たっただけで少し軽くなることもあります。
人は食事と睡眠だけで生きているわけでもない。
何かを好きだと思うこと。面白いと思うこと。明日もう一度見たいと思うこと。そういう小さな動きも、人が生きていくうえでは大事だと思います。
つまり、その根底に流れているのは「生命のトキメキ」なのです。
秋は、少し外へ出てみる
夏の暑さがようやく落ち着いてきたなら、外へ出るのもいいでしょう。
散歩をしてもいい。
少し遠回りして帰ってもいい。
気になっていたお店へ行ってみてもいい。
普段の生活に制限をかけずに、とにかく五感をほどよく、そして気持ちよく感じてもらいましょう。
秋の空気に包まれると、夏とは違う匂いがあります。陽の光も違います。何かを探しに行く必要はありません。歩いているうちに、向こうから見つかるものもあります。
トキメキは、頑張って作るものではなく、気づくものなのかもしれません。
まとめ|秋に、もう一度トキメいてみる
秋は五感がよく働きます。
いえ、五感が喜ぶものがたくさんあります。
食べ物、風、匂い、光、音。
季節のほうから、こちらへいろいろなものを投げかけてきます。
それを全部通り過ぎてしまうのは、少しもったいない。
旅行へ行くのもいい、でも無理やり行かなくていい、行けるなら行けるところへ。
美術館に行くのもいい、でも美術の先生になるのではない、芸術に詳しくなくてもいい、この絵いいなって感じるだけでいい。
今日の空がきれいだった。
新米がおいしかった。
知らない曲が妙に気になった。
AIで調べなくていいですよ。
AIは知識であって、魂はそこにはない。
AIの知識はなくてもいい。
人間の心で感じる。
心が一瞬でも動いたら、その感覚が心身を養う。
秋は、身体を整えるだけでなく、忘れていた感覚を呼び醒ます季節でもあるのだと思います。
この秋、「いいな」と思ったものを一つ見つけてみてください。大げさな感動はいりません。小さなトキメキが一つあれば、それだけで昨日とは少し違う一日になります。
関連記事
FAQ よくある質問とその答え
東洋医学では、なぜ秋と肺が関係するのですか?
「トキメキ」が健康によいという意味ですか?
秋に五感を意識するなら、何をすればいいですか?
気分が沈んでいるときも「トキメキを探す」とよいですか?
秋の気分や睡眠の変化に合う漢方薬はありますか?
For English Readers
Rediscover a Little Spark This Autumn
Autumn is a season that naturally invites the senses to wake up.
Food tastes different. The air changes. Evening light softens. Insects become more noticeable, and certain scents suddenly tell us that summer is over.
In traditional East Asian medicine, autumn is associated with the Lung system. This does not refer only to the anatomical lungs. Traditionally, the Lung is also connected with breathing, the nose, the skin, and the body’s contact with the outside world.
Perhaps that is one reason autumn is such an interesting season for paying attention.
This article uses the Japanese word tokimeki — a small feeling of excitement, attraction or emotional movement. It does not have to be dramatic. It might be a beautiful sky, a meal that tastes especially good, a piece of music, a book you unexpectedly pick up, or simply a cool breeze on the way home.
Yōjō, or nurturing life, is not only about avoiding illness. Sometimes it is also about allowing yourself to notice what makes you feel alive.
You do not need to travel somewhere special or become an art expert.
Just notice one thing today that makes you think:
“I like this.”
That may be enough to wake up a part of you that had gone quiet.
Kampo medicine also looks at the whole person rather than matching one emotional or physical symptom with one formula. Changes in mood, sleep or energy may be understood differently depending on digestion, sensitivity to cold or heat, fatigue and other signs. If seasonal symptoms continue, professional consultation is recommended.
【おすすめの漢方薬】
この季節におすすめの漢方薬・漢方レメディ
今回の『ひとこと養生訓』では、“トキメキ”をキーワードにして、秋の養生=五感を楽しむというお話をしてきました。しかしその一方で、秋になると心身の症状が出てくる方もおります。
- 気持ちが落ち着かない
- 気分が沈む
- 眠りが浅い
- 人の言動が気になりすぎる
秋は季節の変わり目であり、寒い日冬への準備期間ですから、このような症状が出ることはあります。こういったときは、無理して楽しもうとせず、漢方のお世話になることも大切です。
東洋医学・中医学では、上述したような訴えがあっても、一つの症状だけで漢方薬を決めることはありません。その他にある体の状況、つまり冷えや熱、食欲、睡眠、胃腸の状態、疲れ方、季節による変化などを考慮し、その人の身体全体を見ながら考えていきます。
同じ「元気が出ない」という言葉でも、身体の中で起きていることは人によって違います。
季節の変わり目になると毎年調子を崩す、気分や睡眠の変化が続く、生活を整えてもなかなか戻らないという場合は、自己判断で漢方薬を選び続けず、一度専門家へ相談してみてください。
漢方薬については薬戸金堂でご相談いただけます。体質や季節、今の身体の状態を見ながら、その方に合った考え方をご提案しています。
※ インスタグラムやX、noteなどを見ていますと、「〇〇のときは〇〇湯」などと一覧で明示しているものがございますが、これらはあくまで参考程度にしておくとよいでしょう。自己判断はかえって治療の時期を逸してしまうことがありますので、しかるべきところでご相談してみてください。
漢方薬は、個々の体質に合わせた処方が大事になります。
当院をはじめ、漢方薬に詳しい漢方薬重視の薬局・薬店・ドラッグストアでのご相談をお勧めいたします。また、漢方薬は、変化する体質や時期によって変えていくこともありますので、定期的な受診をお勧めいたします。
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鍼灸師・登録販売者・国際中医師
東洋遊人会・会長/日本中医会・会長/東洋脉診の会・会長
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