『謝謝、北京!ー北京研修日誌(5)』腎科へ
腎科へ
研修二日目の午前は、腎科です。
腎科は、糖尿病と腎臓病がメインとなります。
私たちの担当は、李哲先生。
柔和な笑顔で、とても温和な先生です。
講義と言いますか、症例などのお話しを聞いたのは中医師の休憩室、着替え室。
机の上には雑多に物が散らばっているのが、いかにもな感じです。
上の写真を見て下さい。
李先生の斜め後ろに電子レンジがありますが、この電子レンジはお弁当を温めるものではありません。
ドアの所に「外敷薬専用」と書いてありますように、これは(後で述べます)薬が入った枕を温めるためのもの。
時折看護師さんが入ってきて、その枕を温める所にも出くわしました。
当直室も兼ねているのか、ここには二段ベッドがあり、寝泊まりできる様子です。
中国では、腎科は西洋医学の検査と同時に、中医による漢方薬はもちろんのこと、その他にも様々な手法を用いる総合治療をして患者さんをサポートしていきます。
この漢方医学がとても効果があるようで、糖尿病による合併症にもいいそうです。
また、以前は口渇や口乾などの症状が出てから受診する人が多かったようですが、今日(こんにち)では、まだ症状がないような人でも、早め早めに漢方による治療をして、ひどくなる前に治療することでより効果を発揮しているとのことです。まさに、東洋医学の未病的な発想がここにはあるかと思いますので、日本も見習いたいところですよね。
漢方薬の活用
李哲先生によりますと、糖尿病の治療には、まず飲食の指導が大事ということ。
やはり飲食が基本にあるのですね。
そして次に大切なのが、漢方薬の選定。
ここはやはり中医ですから、弁証論治が大事であるということ。
これはもちろん当然なのではありますが、やはり実践のこの場でいわれるととても説得力があるのです。
日本にも漢方を処方している医師は多くなっていると思いますが、日本の漢方の多数派の流派の影響なのか、この弁証論治ができる先生はまだ少ないのが私の印象です。
実際はどうでしょう?
鍼灸師の方が弁証論治している方が多いのかなと思いますが、どうでしょうか?
ここ北京中医薬大学付属の東直門医院では、弁証の例として、たとえば肝胃鬱熱ですと、大柴胡湯を使います。
その他に、証に合せて津力達顆粒、葛根芩連湯、天耆降糖カプセルという漢方薬を使うそうです。
現在先生がよく参考にしている資料がこちらです。
この本の中に、弁証の仕方などが書いてありまして、ところどころ開いて解説をしてくれました。
李哲先生の解説ですと、
糖尿病は、
鬱→熱→虚→損
という順番に進行していくということで、本を開きながらこのように教えてくれました。
なるほど、糖尿病の弁証論治をするときの基本としてとても参考になります。
腎科臨床研修
実際に、糖尿病の治療で入院されている患者さんのところへ行きまして、問診や脈診、舌診などをさせていただきました。
(写真は患者様のプライバシーのため加工してあります。)
この方は、ごく最近入院された方です。
口渇などの症状は5年前からはじまり、体重も10キロ減っていたそうです。
しかしそのような症状が出ていたにもかかわらず、医者にかかることはなく、自分で市販の糖尿病の薬を飲んでいたそうなのですが、最近になって更に体調が芳しくないため、ここ東直門医院を訪ねたところ、即入院ということになりました。
舌は赤く膩苔、脈も細いなどで、弁証は肝胃痰熱、気陰両虚。
処方している漢方薬は、大柴胡湯、参耆麦味地黄丸(六味地黄丸に近い)で、経過は良好とのことです。
このように、他3名の臨床研修をいたしました。
腎臓科でも使われる様々な手法
耳鍼
この腎臓科でよく見かけたのが耳鍼でした。
他の科でも使われていると思いますが、腎臓科ではよく目にすることができました。
係の先生が、入院患者さんを巡って鍼をしていくのですが、間違えないようにということなのか、耳つぼの模型と実際の耳を比較しながら粒を貼っていきます。
このような耳鍼の模型は、左右でています。
どうしてわざわざ左右のものがあるのかな?と思っていたのですが、このように実際に模型を手にして巡回するのであれば、ツボを間違えることはありません。
そういった意味で、左右対応できるようにと作られたのかなと合点がいきました。
こちらのように、すでに耳の形で粒がセットされた物も見せていただきました。
この写真は、85歳のおばあちゃまに施した耳鍼の様子です。
李先生のお話ですと、このおばあちゃまはとても中医学がお好きで、中医のお陰でこうして生きることができているとおっしゃっているとのこと。
そしてとても好奇心が旺盛な方で、85歳にしてタブレットをすらすらと使っておりました。
別れ際には笑顔で手をふってくれる、とてもチャーミングな方でありました。
何かの番組で、アメリカの軍施設でも痛みを取るために耳鍼が使われているのを観たことがあります。
個人的には、耳鍼はやったことがありませんので、どのようなものかは正直分からないですが、東直門医院でこれだけ活用されているところを観ると、研究の価値はあるなと感じました。
腎康注射液
これは写真がないのですが、漢方の生薬を注射して腎臓をよくするというもの。
腎康注射液の中身は、大黄、黄耆、丹参、三七です。
外敷薬
こちらは、漢方薬の生薬が入った枕のようなもの。
これを、冒頭の写真で説明したように、電子レンジで温めて、患者さんの患部に当てます。
そうすると、患部が温められて血流がよくなるそうです。
糖尿病は血管が弱くなったり、感覚が鈍るために床ずれができやすかったり、傷も治りにくいですから、このようなもので患部を温めることはとても有効になります。
ここでも吸角・カッピングを
箱灸
研修をさせていただいた病室を見回すと、箱灸をしている方がおりました。
箱灸とは、主にお腹の上に箱を乗せて、その箱の中にお灸を入れて温めるというもの。
実際に病室でされている姿を写真に納めることはできませんでしたが、中医の医療道具を扱うお店でいただいたカタログを見ると、実にたくさんの種類の箱灸が販売されていることが分かります。
このような箱灸のページが、この後も2~3ページくらい続いています。
日本でも販売されていますが、ここまでたくさんの種類を見たのは初めてです。
箱灸は粗めのもぐさを使うので、換気設備がしっかり整っていないとなかなか使えないものです。
しかし中国では無煙のもぐさもありましたので、そういったものを使えばできそうだなと思います。
かつて私は日本国内の様々な先生の所を学び歩いたことがありますが、東京都内で、鍼灸にも入院施設が必要だとの思いから、入院ができる鍼灸院を建てた方がおります。先生の鍼灸院はとても人気があり、勉強会も隆盛を誇っておりました。しかし、やはり“鍼灸で入院”というのはかなり時代の先を行きすぎていたようで、鍼灸で入院するというのを理解してくれる患者さんはほとんどいなかったようで、そのために作られた病室は普通に鍼療室として使われていました。
もしこのような先見の明のある人が事業としても続けていたら・・・。
最近は何泊かして行う断食道場で養生するのも流行りのようですから、そろそろこのような中医学を総合的に活用した施設が日本に登場してもいいようにも思いますが、いかがでしょうかね。
私も将来作れたらなと思いますけども・・・。
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