正気VS邪気
正気について
正気とは?
体の防御力や回復力など、体を守る力のことを東洋医学(中医学)では正気といいます。
より詳しくお話しすれば、これは「衛気」と「営気」という二つの気が合体したものであります。
正気は体を守ってくれるものですから、強いに越したことはありません。
そして、この正気を常に元気な状態にしておくことが「養生」ということになります。
※ 養生については、以前書きましたこちらの記事をご覧下さい。
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正気が弱るとき
しかし、私たちは日々変化の中で生きている人間ですから、この正気も弱ることがあります。
常に完璧な人はいません。
正気が弱る原因とは、例えば、仕事が忙しくて休みがないとか、睡眠が不十分であったり、日々の食事がおろそかになっているといった生活環境の不備や、精神的なストレスも該当します。このような原因が少しずつ少しずつたまってくると、正気もまたじわりじわりと弱くなっていきます。
また、これは残念なところではあるのですが、年齢とともに弱っていくことは否めません。また、生まれ持った体質のようなものや、大病をした後などは正気が弱ることが多くなります。
正気が弱る原因
- 疲労が長く続く(休めない)
- 睡眠不足
- 食事の内容
- ストレス
- 加齢
- 大病
正気が弱る原因には、以上のようなものなどがあります。
なかなか仕事の量を減らすことは出来ないという方も少なくないと思います。
でも、命(体と心の健康が)あっての物種でありますから、そこは守れなくても、少なくとも食事や睡眠などは確保する、そんな心がけは大事になってきます。
邪気について
邪気は外からやってくる悪者
邪気とは、体の外からやってくるもので、身体に害を与えるものをいいます。
邪気は体にとっては不必要なもので、かつ体に攻撃を加えたり、免疫機能などを揺さぶります。
例を挙げると分かりやすいのですが、例えば春先ですと、花粉や黄砂といったものがあります。
また、冬の時期になると、インフルエンザや風邪などのウイルスといったものが体に攻撃してきますが、こういったものも邪気に含まれます。
その他に、季節や気候の変化も外邪になります。
季節の巡りには寒さや暑さといったものがありますが、気持ちいいと感じる暑さや寒さは、体にとっては快刺激になりますので、正気を育ててくれるところがあります。天気が良い暖かい日に、外で日向ぼっこをすると、ああしあわせだなぁと感じるかと思いますが、こういった感覚は正気を回復しているものといっていいでしょう。
しかし、その範囲を超えて、極度に体を傷めるようなものになると、その暑さや寒さは邪気になります。
例えば最近の日本の夏の暑さは文字通り異常で、熱中症になることも増えておりますが、これは、猛烈な暑さという邪気が体を攻撃した状態であります。
このような過剰な気候の邪気のことを、「六淫(りくいん)」の邪気といいます。
六淫の邪気には、風・熱・湿・燥・寒・火という六つがあり、熱や火は過剰な暑さ、湿は梅雨時のようなじめじめした湿気のことを指します。
正気と邪気の抗争
正気と邪気のせめぎ合い
私たちの体は、毎日、体の外にある様々なものに触れています。
体にとって、とても有益になるものもあり、それはそれで大いに歓迎したいものです。
例えば食事。
おいしいもの、栄養のあるものは特に悦ばしく感じますね。
しかし、歓迎されるものばかりではありません。
ほこりやダニ、花粉や黄砂、そしてインフルエンザや風邪といったウイルスや細菌など、体には不必要なものもたくさん存在します。
正気がしっかりしている意味
ふだん私たちは普通に、そして何も気にせずに暮していますが、これは正気と邪気というものがせめぎ合っているなかで、正気がしっかりと私たちを守ってくれているからなのであります。
たとえ邪気が強く、また邪気の数が多かったとしても、正気が強ければ邪気をはねのけることが出来ます。
仮に邪気の攻撃力が圧倒的に強く、数も多くて負けてしまったとしても、それまでの正気がしっかりと保たれていれば、重症化せずにすむことが多くなります。
正気が弱っていると・・・
逆に正気が弱っていると、邪気からのガードが弱くなりますので、どんどん邪気に攻め込まれてしまいます。
ノーガードでボクシングをするようなものです。
これでは一方的に邪気からの攻撃を受けることになるので、正気はますます弱ってしまいます。
正気を強くしておくこと
邪気を外に出す
うっかり邪気が入ってしまった場合、邪気を外に出すことが必要になります。
例えば漢方薬でいうと、解表薬というのがありますが、これは表面に入った邪気を外に出すためのもので、有名なところでは麻黄湯というのがあります。
麻黄は体の表面を強力に温める作用がありますので、その作用によって邪気を外に放出します。
邪気が入ってきたタイミングや、どこに入っているかを見計らいながら、その時期その時期に合った漢方薬で邪気を追い出していくことを、「袪邪(きょじゃ)」といいます。
正気を扶(たす)ける
しかし、袪邪をずっと続けて行くわけにはいきません。
なぜかといいますと、袪邪には限界があるからです。
邪気を外に出す漢方薬を使って、一気に片がつけばそのまま快方へ向かっていくわけですが、うっかりと出し切れない邪気が居座ってしまう、つまりこじらせてしまうと、解表薬では追いつかなくなります。また、解表薬で体の表面の力を使ってしまっているので、長期戦に持ち込まれてしまうと、表面の力が不足していくので、邪気を外に出すことができなくなります。
そこで、袪邪よりも大事になってくるのが、“正気を助けること”になります。
正気を助けることを、東洋医学(中医学)では「扶正」といいます。
前述しましたように、体と心を守ってくれる根本的なものは正気です。
とにもかくにも正気の力が十分にあれば、邪気を除くことが出来るのです。
このような正気を助ける目的で使う漢方薬が、補薬、補益薬と呼ばれるものです。
また、鍼灸は身体のバランスを調えていきますので、正気の調子も取り戻すことが出来ます。
扶正袪邪
以上のように、邪気を外に出す「袪邪」と、正気を扶ける「扶正」。
この二つを同時に目指すことを、合わせて「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」といいます。
風邪やインフルエンザになったとき、袪邪をすることはもちろんのこと、体力が落ちないような扶正も大切になってきます。
風邪を引きやすい、風邪を引いても治りが悪い、最近何だか元気がない・・・こういった症状があるときや、仕事が忙しくて睡眠がとれていないとか、大きなプレッシャーが続いている場合などは、扶正、補益をする必要があります。
また、常に正気が元気であるように、日頃の生活全般を見直してみることをおすすめいたします。
漢方薬のこと
邪気を外に出す
邪気を外に出すためのもの。
防御力を強くする
体の外側の守りを強くするには、衛益顆粒がおすすめです。
正気を強くする
正気を強くするものは、どこを補うかによっていくつか種類があります。
ここでは全てを挙げることが出来ませんが、いくつかご参考になさって下さい。
生活を調える
扶正のためには、日頃から生活を調えておくことが何より大事になります。
既述しましたように、食生活や睡眠など、体や心を助ける基本的なところを助けてあげることが大切です。
頑張ることも大切です。
一生懸命に働くことも大切です。
しかし、それも健康があってこそであります。
自分の体を見返しながら、体調が崩れてきそうだな?風邪を引きそうだな?と感じたときは、正気を助けることをして欲しいと思います。
また、風邪やインフルエンザに負けないようにも、正気を助ける体への労りをもってあげて下さい。